金融市場NOW
地球温暖化対策で一歩先を進む欧州
2021年07月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
欧州復興基金を活用したESG関連分野への投資に注目が集まる
- 経済に与える影響の大きさから気候変動に市場の注目が集まる。
- 欧州は世界に先駆けてカーボンニュートラルの方針を表明。
- 今夏より開始される欧州復興基金はESG関連への投資が義務付けられている。欧州がどのような成果を挙げるかに世界の注目が集まる。
経済に与える影響から気候変動に注目
経済に与える影響が大きい事象の1つとして気候変動に注目が集まりつつあります。最近は日本においても、台風の大型化や局地的な集中豪雨のような異常気象が増加しており、気候変動(地球温暖化)が原因との見方が強まっています。4月下旬には米国で温暖化サミットが開催され、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとること)に向けた工程表等が公表されました(表1)。
表1:主な国・地域の温室効果ガス削減目標
国・地域 | 中期削減目標 | 長期削減目標 |
---|---|---|
欧州連合 | 2030年:55%(1990年比) | 2050年 カーボンニュートラル |
日本 | 2030年度:46%(2013年度比) | 2050年 カーボンニュートラル |
米国 | 2030年:50~52%(2005年比) | 2050年 カーボンニュートラル |
欧州はいち早く温室効果ガス削減を提唱
地球温暖化対策(温室効果ガス削減)で一歩進んでいる欧州(グラフ1)では、欧州委員会が2019年12月に2050年のカーボンニュートラルに向けての工程表となる「欧州グリーンディール」を公表しました。2030年までに1990年比で55%削減する目標等が設定されています。4月の温暖化サミットで2030年までに米国は2005年比で50~52%、日本は2030年度までに2013年度比で46%削減する目標を公表しました。世界的に温室効果ガス削減への取り組みが進みつつあるようです。
欧州のESG関連投資に世界が注目
欧州では2021年夏ごろより7,500億ユーロ規模の欧州復興基金が開始される予定となっています。欧州復興基金を活用し、新型コロナウイルスで財政が悪化した各国に資金が提供される予定となっています。6月15日には欧州復興基金の資金を手当てするための債券が、初めて発行されました。総額7,500億ユーロのうち、約30%を温暖化ガス削減等のESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉)関連分野に使用することがルールとして定められています。資金を投入してもすぐには結果がでにくいとされるESG関連分野に巨額の投資を行うことに、ESGに対する欧州の本気度がうかがえるものと思われます。米国はトランプ政権で脱退したパリ協定に復帰、経済面で対立する中国とも気候変動問題では協調姿勢を示し、日本も温室効果ガス削減目標を引き上げるなど、今や世界で最も重要視される課題となっていると思われます。欧州の取り組みが世界全体の取り組みの手本となるべく注目されています。
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