アナリストの眼

「人事×Tech」で高めるESG評価

掲載日:2017年12月20日

アナリスト

投資調査室 佐藤 啓吾

「HRTech」という言葉は、皆さんご存知でしょうか。近年、新聞報道において、Fintech、AI、自動運転などテクノロジーの進化が生み出す新たな市場の成長性に注目が集まっていますが、人材の育成・採用・人事評価市場においても、「HRTech」というワードが注目され始めています。日本の有効求人倍率(季節調整値)はバブル景気時のピーク(1990年7月)を越え人手不足感が高まる一方で、既に人口は減少局面に入っています。企業の持続的成長を実現するためには、採用数の確保だけでなく、社員の労働生産性の向上が非常に重要な課題となっていますが、社員の待遇改善やライフワークバランス充実を経営方針として掲げていても、その取り組みが「どのように生産性向上」につながるかというところまで踏み込んで示すことのできる企業の数はそう多くありません。

そこで、「HRTech」が注目されつつあります。「HRTech」とは「Human ResourcesとTechnologyを合わせた造語」です。具体的にはテクノロジーを活用し、例えば「採用段階における企業と求職者の最適なマッチング」や、「採用後に個々社員のスキルや意欲に合わせて、その可能性を最大限に発揮できる職務付与」を実現するシステムのことを指します。

私が担当する求人広告や人材派遣・紹介をビジネスの中核としている企業の業績は、人手不足を背景に非常に好調に推移しています。同業界の成長性分析は、数量(掲載件数や人材決定数・派遣社員数)×単価(掲載単価や紹介手数料・派遣単価)という2つのファクターがどうなるかが基本となっており、現在の好業績も人材確保のニーズが高まる中で、この2つのファクターが力強く成長することで実現されています。今後も労働市場における人材サービスの存在価値は拡大し、同業界の企業にとっては追い風の環境が継続すると考えられます。

しかし、長期的には、より企業の人事領域に踏み込み、例えばこの「HRTech」を新たな事業機会と考え、「人材を供給するだけのサービス」から「人材の最適な確保と育成を実現するサービス」にビジネスモデルを転換できるかが高成長を実現する鍵となると私は考えています。

ESG評価の観点でみれば、「S:社会」という要素において、生産性向上という日本経済全体が抱える社会問題を解決できるかどうかという視点となります。古いビジネス様式にとらわれず、時代の変化やテクノロジーの進化を柔軟に捉えて成長する意思を持った企業を選別する眼を大切にしつつ、企業との建設的な対話を心がけていきたいと思います。

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