金融市場NOW
デジタルヘルスケア関連スタートアップが多数創出
2022年02月08日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
膨大なヘルスケアデータを利用し研究開発やサービス開発が進む
- イスラエルでは長年蓄積された医療データを利用することで、世界最速ペースで新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだ。
- 医療データは研究開発に利用され、医療とテクノロジーが融合しデジタルヘルスケアが進展。
イスラエルのデジタル医療に注目が集まる
2020年12月より各国で新型コロナウイルスワクチンの接種が開始され、2022年1月末時点の先進諸国の人口当たり接種率は70%を超えています。接種開始の当初、多くの国が接種に係る人材の確保や優先順位などの課題に直面するなか、イスラエルが医療データを活用することで、世界最速ペースで接種を進めたことから(グラフ1)、同国のデジタル化された医療体制が注目されました。
医療データーベースで優先接種対象者を抽出
日本ではコロナ禍前から、医療現場のデジタル化が課題となっていました。厚生労働省によれば、日本の電子カルテの普及率は46.7%(2017年時点)と低く、病院間での患者情報の共有が容易にできていません。一方、イスラエルの国民皆保険制度では、医療サービスは4つの健康維持機構(HMO:Health Maintenance Organization)*を通じて国民に提供されています(グラフ2)。また、過去の通院、診断結果、処方履歴などの加入者の情報は、統一されたデータベースに生涯にわたり保存され、国内のどの病院からでも閲覧が可能となっています。JETROによれば、新型コロナウイルスワクチンの接種でも、この医療データーベースに基づき、高齢者や基礎疾患のある人などを速やかに抽出できたことが、国民の接種促進につながったとしています。
- 傘下の医療機関で基本的な医療サービスを提供する非営利の 健康保険組織。
デジタルヘルス関連スタートアップが多数創出
1990年半ばより蓄積された膨大な診療データは、研究開発や製品・サービス開発に活用されています。また、企業や研究機関も利用できることから、イスラエルでは医療とテクノロジーが融合し、デジタルヘルスケアが進展しています。毎年数百社のスタートアップが起業するイスラエルでは、2021年末時点で存在する8,212社のスタートアップのうち、約2割がヘルステック(デジタルヘルスケア)関連が占めています(グラフ3)。イスラエル政府は、デジタルヘルスを経済成長のエンジンの1つとし、国の予算を重点的に投入していることから、今後も多数のデジタルヘルス関連企業の創出が期待されそうです。
金融市場動向
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