金融市場NOW
アフリカ各地で普及する“デジタル医療”
2021年11月22日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
医師不足や良質な医療へのニーズから市場の拡大が期待される
- アフリカで“リープ・フロッグ”が情報技術のみならず医療などの分野でも見られている。
- 携帯電話を使用した遠隔診療が普及。来院者数を大幅に削減するなど、医療の効率化が進む。
- 医療環境の整備が急務であるアフリカにおいて、デジタル医療市場のさらなる拡大が期待される。
さまざまな分野で見られるリープ・フロッグ
固定電話がほとんど普及していないアフリカにおいて、先進国を上回るスピードで携帯電話が急速に普及したことは、“リープ・フロッグ(蛙飛び)*”の一例としてあげられます(グラフ1)。アフリカは、先進国諸国に比べレガシー(既存インフラや既得権益者、規制など)が少なく、最先端技術を速く普及しやすい環境にあります。そのため、近年“リープ・フロッグ”は、情報技術のみならず医療や金融などのさまざまな分野でも見られています。
- 道路や電気などのインフラが未整備な地域で、既存の技術を経ることなくいきなり最新の技術が発展・普及すること。
デジタル医療でアフリカの医療環境に変化
アフリカでは人口が急増しており、国連の推計では、2050年には現在の約13億人から倍増する見込みです。増加する人口に対し、医師が圧倒的に足りていません。例えばエチオピアでは1,000人当たりの医師数が0.1人を下回り、日本の約25分の1となっています(グラフ2)。数少ない病院には長蛇の列ができ、遠方から訪れてもその日中に診察を受けられないこともあるようです。携帯電話の普及とレガシーの少なさに着目した欧米のハイテク企業の参入により、医療環境が大きく変化しました。地域医療との連携により、チャットボックスを利用したAI(人工知能)によるカウンセリングや医師や看護師による遠隔診療、電子処方箋サービスなどが提供されています。ルワンダでサービスを提供する英国ベンチャーのサービス登録者数は2019年に200万人を超え、架電者の約75%がカウンセリングや遠隔診療で完結するなど医療の効率化につながりました。
良質な医療ニーズから市場の拡大が期待される
近年、アフリカで医療サービスを提供するハイテク企業(医療テック企業)が、ベンチャーキャピタルや開発機関などから多額の資金を調達するケースもみられます。その額は年々増加傾向にあり、2020年にはエジプトなどの医療テック企業が合計でおよそ1.41億ドルを調達しました(グラフ3)。医師不足や良質な医療へのニーズの高まりなどからアフリカの医療環境の整備は急務であり、デジタル医療市場のさらなる拡大が期待されます。
金融市場動向
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