金融市場NOW

アグリテックで“食品ロス”の削減へ

2021年12月10日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

食料・農業分野のITベンチャー投資が拡大

  • 人口の増加が予想され、食料の安定確保が課題となるも、大量の食材が世界中で廃棄されている。
  • 新興国では、加工技術や流通網が未発達であることから、流通の過程でやむなく食材が廃棄されている。
  • ITベンチャーの参入によりインドの農業における物流に変化も。今後は、成長が期待できる投資先として新興国に注目が集まる可能性も。

人口の増加で食料の確保が世界的な課題に

グラフ1:2050年に世界の人口はおよそ97億人へ

  • ※世界人口の予測推移
  • 出所:国連の資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

国連によれば、世界の人口は新興国を中心に今後、大幅な増加が見込まれています(グラフ1)。食料の安定確保が世界的な課題となっているものの、消費のために生産された食料のおよそ3分の1が世界中で廃棄されています。

脆弱なインフラにより食料が廃棄されることも

グラフ2:流通の過程で食材がやむを得ず廃棄されている

  • ※収穫後から流通までの過程における食品ロスの発生率(地域別)
  • *1 2016年時点、オセアニアは豪州・ニュージーランドを除く
  • 出所:FAOの資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

生産された食料は、過剰生産や出荷のための品質基準に満たないなど、さまざまな理由で廃棄されています。しかし、これらは主に先進国における、食料廃棄の要因であり、新興国では別の要因で大量の食料が廃棄されています。新興国は先進国に比べ収穫技術が未発達であることもあり、作物のすべてを収穫できないことも少なくありません。また、熱帯や乾燥帯などの過酷な気候条件での保存・加工設備や、流通網が整っておらず、収穫してから都市部へ輸送する間に食材が傷んでしまい、やむを得ず廃棄されてしまうこともあります(グラフ2)。

新興国におけるアグリテック普及が期待される

グラフ3:新興国も食料・農業分野への投資を積極化

  • ※食料および農業関連ベンチャー企業への国別投資比率
  • 出所:Agfunderの資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

インドでは大量の食材が流通の過程で廃棄されています。生産者から購入者に農産物が渡るまでに多数の仲介業者が介入するため、物流に多大な時間を要することが要因とみられます。こうした問題から近年、IT(情報技術)ベンチャーにより、農家と都市部のレストランや食料品メーカーなどの購入者が直接取引ができるプラットフォームが構築され、利用者は増加しつつあるようです。インドでは、2019年に450以上のアグリテック*2関連のスタートアップ企業が生まれており、そのうち半数以上が流通関連となっています。

近年、食料および農業分野におけるITベンチャーへの投資が世界的に加速しています。2020年の世界の食料・農業分野のITベンチャーへの投資額は305億ドルとなり、投資額の上位には中国やインドなどの新興国が名を連ねています(グラフ3)。新興国は、さらなる成長が期待される投資先として今後も投資家から注目を集めそうです。

  1. ITを活用し、食料の生産から加工、流通や消費までのサプライチェーンを見直すことで、食料廃棄の改善に役立てる技術。

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