金融市場NOW
“安全な水”を利用できる社会の実現へ
2022年10月19日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
拡大が見込まれる水ビジネス市場で日本の高技術が存在感を高められるか
- 国連は、2030年までに誰もが安全な水を使うことができるよう、インフラの構築や水質の改善を行うよう、各国・地域に協力を呼びかけている。
- 水資源分野で高い技術を有するとされる日本企業が、今後世界で存在感を高めることが期待される。
“安全な水”を使用できるのは限られた人のみ
地球にある水のうち97.5%は塩水であり、淡水はわずか2.5%です。なお、淡水のうち大部分は氷や氷河であり、河川や湖沼などの人々が利用しやすい水は約0.01%にすぎません。
貴重な水資源を安全に不自由なく利用できるのは、インフラが整備された国に住む限られた人だけです。ユニセフによれば、2020年時点で世界の人口78億人のうち20億人が水道のパイプで安全に管理された“安全な水”を使用できず、このうち1億2,200万人が湖や河川、用水路などの浄水未処理の水を使用しています(グラフ1)。
- 安全に管理された飲み水
- 自宅にあり、必要な時に入手でき、排泄物や化学物質によって汚染されていない、安全に管理された水源から得られる水。
- 基本的な飲み水
- 自宅から往復30分以内(待ち時間を含む)で水を汲んでくることができる、安全に管理された水源から得られる水。
- 限定的な飲み水
- 自宅から往復30分よりも長い時間(待ち時間を含む)をかけて水を汲んでくることができる、安全に管理された水源から得られる水。
- 安全に管理されていない水源
- 外部からの汚染、特に人や動物の排泄物から十分に保護される構造を備えていない水源。
- 地表水
- 川、ダム、湖、池、小川、運河、灌漑用運河といった水源から直接得られる水。
なお、国土交通省の資料によると、水道水をそのまま飲むことができる国・地域は日本を含めてわずか12ヵ国しかないといわれています。
経済発展や都市化、人口増加にともなう水の使用量の増加などにより、水需要の増加が予想されています(グラフ2)。国連は、2030年までに誰もが“安全な水”を使うことができるよう、インフラの構築や水質の改善を行うよう、各国・地域に協力を呼びかけています。
水資源分野で日本技術の存在感が高まるか
経済産業省によると、2010年時点で50兆円であった海外の水ビジネス市場は2019年には72兆円まで拡大し、2030年には110兆円を超えると見込まれています。
日本は水と衛生分野に関する政府開発援助(ODA)として世界最大の金額を拠出するとともに、豊富な経験や技術を活かし、専門家の派遣や新興国からの研修員受入れなどの技術協力を行っています。しかし、海外の水ビジネスにおける日本企業のシェアは1%未満と現時点では低く、日本企業の強みを発揮できていないというのが現状です。
ろ過技術である膜分離をはじめ、日本は水資源分野において高い技術を有しているとみられ、世界で貢献できる領域は広いと考えられます。政府は海外シェア拡大をめざし、日本企業のさらなる海外展開を後押していく見込みです。
金融市場動向
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