金融市場NOW
限りある水産資源 持続可能な漁業の実現へ
2023年01月17日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
EUが先陣を切り、IUU漁業の抑制・根絶に向けた国際的な取組みが広がる
- 食品流通の進展や経済発展にともなう食生活の移行で、世界の魚介類の消費量は過去50年で増加。
- IUU漁業による乱獲などで天然魚の漁獲量は頭打ちに。水産資源の持続的な利用のため、IUU漁業根絶に向けた一層の取り組みが求められる。
生活水準の向上で魚介類の消費量が増加
世界の1人当たりの魚介類の消費量が、過去50年間でおよそ2倍に増加しました(グラフ1)。
国際連合食糧農業機関(FAO)は消費量増加の要因として、国際的な食品流通の進展や、経済発展が進む新興国で、肉や魚へと食生活の移行が進んでいることなどを挙げています。
天然の漁獲量が頭打ち、乱獲が問題に
世界の魚介類消費の増加とともに、天然魚の漁獲量は増加し、1960年から1990年までの約30年間で、約2.5倍まで増加しました(グラフ2)。
しかし世界における天然魚の漁獲量は9,000万トン前後で頭打ちとなり、1990年以降は養殖が伸び続ける消費量を支えています。養殖量は年々増加傾向にあるものの、増加する消費量を賄うためには、持続可能な漁業による適正な漁獲が不可欠であると考えられます。
天然魚の漁獲量が伸び悩む原因として、水質汚染などによる水産資源の減少が挙げられますが、近年、国内外の漁獲規則を遵守しないIUU(違法:Illegal、無報告:Unreported、無規制:Unregulated)漁業による乱獲(捕りすぎ)が、生態系のバランスを崩し、持続可能な漁業を脅かしていると世界的な問題となっています。
IUU漁業根絶で持続可能な水産資源の利用へ
乱獲により増大余地のある水産資源は減少傾向にあり、2017年時点で、およそ6%となっています(グラフ3)。
水産物の輸入国としてEU(欧州連合)が先陣を切り、2009年にIUU漁業を規制する法律を施行した後、IUU漁業の抑制・根絶に向けた国際的な取組みが広がっています。2016年には韓国が、2018年には米国が、輸入水産物に対し漁獲情報等の証明・提供を求める措置を実施しています。日本でも2022年12月に「水産物流通適正化法」が施行され、輸出入時に適法漁獲の証明書の添付が必要となりました。
水産資源の回復や持続可能な利用のために、IUU漁業根絶に向けた取り組みをさらに加速していくことが、不可欠となりそうです。
金融市場動向
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