金融市場NOW
金融教育の推進で持続可能な社会の実現へ
2022年12月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
大人から子どもまで、幅広い層に向けた金融教育を強化
- 日銀の資金循環統計によれば2022年6月末時点での家計金融資産は2,007兆円と、過去2番目の高水準。
- 内訳では、現金・預金の割合が最も高く、家計資産の大半が現金・預金に滞留しているのが現状。
- “貯蓄から投資へ”の移行により、すべての人が経済的に自立し持続可能な社会を実現することが期待される。
家計金融資産の大半が預貯金に滞留
日銀の資金循環統計によれば、2022年6月末時点での家計金融資産は前年同期比1.3%増の2,007兆円と、2021年12月末時点の2,014兆円に次ぐ、過去2番目の高水準となりました。
内訳では、現金・預金の割合が最も高く(グラフ1)、前年同期比2.8%増の1,102兆円と2005年3月末以降で過去最高となっています。
2001年4月に発足した小泉政権が『骨太の方針』で、“貯蓄から投資へ”のスローガンを掲げ、預貯金中心から株式投資などのへの切り替えを推奨してきたものの、家計資産の大半が現金・預金に滞留しているのが現状です。
貯蓄から投資への流れで持続可能な社会の実現へ
米国や欧州の家計金融資産の内訳を見てみると、株式等や投資信託の割合が高くなっています(グラフ2)。“貯蓄から投資へ”が進まない原因の1つとして、欧米に比べ資産形成に必要な金融や経済の基礎知識を学ぶ機会が少ないことなどが挙げられています(グラフ3)。
米国では国家戦略として金融教育を推進しています。米国経済教育協議会によれば、全米のおよそ半数の州が金融授業の受講を義務付けています。また、大手金融や地域企業が金融教育をサポートする活動が活発で、幼少期より金融や資産運用を学ぶ機会が与えられています。
岸田首相は、投資から得られる所得、資産所得を増加させる『資産所得倍増計画』を実現する方針を示しており、大人から子どもまで幅広い層に向けた金融教育の強化で、貯蓄から投資へのシフトを進めていく見込みです。
金融広報中央委員会の『金融教育プログラム』では、金融教育は経済の仕組みを理解することで、社会が抱える様々な課題に関心を持ち、自身が公正で持続可能な社会の形成を意識して考え、自ら行動する態度を養うものとしています。
金融や経済に関する知識や判断力が高まることで、預貯金に滞留する家計金融資産が投資に向かい、すべての人が経済的に自立した持続可能な社会を実現することが期待されます。
金融市場動向
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