金融市場NOW
脱炭素化に向けて重要さを増す再生可能エネルギー
2021年11月30日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
経済対策により再生可能エネルギー増に向けた取り組みが進展する見込み
- 欧州の再生可能エネルギーの発電比率は、日米と比較して高い水準。
- 日本では環境保護や景観等の観点から、太陽光パネル設置に規制をかける地方自治体が増加。
- 太陽光パネル設置のハードルは高いものの、岸田政権の経済対策にはクリーンエネルギー投資の促進が含まれており、再生可能エネルギーの増加に向けた取り組みが期待される。
欧州は再生可能エネルギーで日米に先行
50℃近くの高温や洪水等の災害(異常気象)が世界的に頻発しており、地球温暖化等の気候変動が影響しているのではないかとの見方が増えつつあります。地球温暖化防止のために、将来に向けて各国・地域はCO₂(二酸化炭素)に代表される温室効果ガスの排出量削減目標を掲げています。こうした背景もあり、世界的に太陽光や風力等の自然由来である再生可能エネルギーの発電比率(発電電力量に占める割合)が高まりつつあります(グラフ1)。先進国の中でもCO₂削減で先行していると言われる欧州では、日米と比較して再生可能エネルギーの発電比率が高くなっています。
太陽光パネル設置のハードルは高い
2030年度までに2013年度比でCO₂排出量を46%削減することを公表した日本では、福島第一原子力発電所の事故の影響もあり、安全性への懸念からCO₂排出量がほぼゼロである原子力発電所は一部を除いて再稼働されていません。CO₂削減のためには、再生可能エネルギーの利用を増加させるのは必須な状況になっているものと考えられます。政府は風力発電所を設置する際の環境アセスメント(大規模な開発事業などを実施する際に適正な環境配慮がなされるようにするための手続き)の基準緩和を計画するなど、再生可能エネルギー設備の設置に向けた取り組みを強化しつつあります。
一方で、再生可能エネルギーの中で国内では水力に次ぐ発電量を誇る太陽光発電の設備設置には高いハードルがあるようです。日照時間や設置に適した平野部が少ないといった地理的な問題に加え、環境保護や景観の悪化等を理由に太陽光パネル設置に規制をかける地方自治体が増えつつあることも理由の一つとして挙げられます。
再生可能エネルギー増への取り組みに期待
10月22日に閣議決定された日本のエネルギー基本計画では、2030年度には再生可能エネルギーの発電比率を36~38%まで引き上げることとされています。中でも、太陽光発電の発電比率は2020年度の9%から14~16%へと大きく引き上げられる計画となっています(表1)。太陽光パネル設置のハードルは高いものの、19日に岸田内閣が発表した経済対策にはクリーンエネルギー投資の促進という戦略が含まれており、再生可能エネルギーの増加に向けた取り組みが進んでいくものと思われます。
表1:日本の再生可能エネルギーの割合
単位:(%)
2020年度(実績値) | 2030年度(目標値) | |
---|---|---|
太陽光 | 9 | 14~16 |
水力 | 9 | 11 |
風力 | 1 | 5 |
全体 | 26 | 36~38 |
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