金融市場NOW
アジア諸国・地域で普及が期待されるCCUS
2021年10月14日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
脱炭素社会へ移行を進めるためのアジア諸国・地域の切り札に
- 再生可能エネルギーへの移行と同時に、CO₂を回収・利用・貯留する技術であるCCUSが注目されている。
- 化石燃料の利用と脱炭素との両立を可能にするCCUSは、エネルギーの大半を化石燃料に頼る新興国が脱炭素社会への移行を進めるための切り札となる可能性も。
- CO₂の貯留可能容量が多いアジア諸国・地域におけるCCUSの普及と、脱炭素への貢献が期待される。
CO₂の回収・利用・貯留技術に注目が集まる
“2050年 カーボンニュートラル*”を宣言した国・地域は2021年10月時点で120を超え、脱炭素化に向けた動きは世界的な潮流となっています。
脱炭素社会の実現のため、太陽光や風力などの再生可能エネルギーへの移行が進められると同時に、排出された二酸化炭素(CO₂)を回収・利用・貯留する技術であるCCUS(Carbon dioxide(二酸化炭素)・Capture(回収)・Utilization(利用)and Storage(貯留))が世界中で注目されています。
- 地球温暖化の主な原因となる二酸化炭素の排出量を抑制するための概念の1つ。二酸化炭素の排出量と吸収量を同量にし、実質的に二酸化炭素の排出量をゼロにすることをめざす。
CCUSは脱炭素社会への移行の切り札に
発電所や工場などが排出するCO₂を回収し油田やガス田に貯留し、化学製品や燃料を作るための原料として再利用する技術は、環境対策に力を入れる欧米企業が先行しています。高い経済成長が見込まれる新興国のエネルギー需要は、今後も拡大すると予想されています(グラフ1、2)。化石燃料の利用と脱炭素との両立を可能にするCCUSは、エネルギーの大半を化石燃料に頼る新興国が、脱炭素社会への移行を進める切り札となりそうです。
アジアでのCCUSによる貢献が期待される
CO₂を回収・貯留するには、広大な場所が必要となります。CO₂を通さず、貯留のためのすき間がある地層であることが求められ、古い油田やガス田などが適しているとされています。インドネシアなどには枯渇油田やガス田があり、アジア諸国・地域にはCO₂の貯留可能容量が年間100億トンを超える国が多数存在するとみられています(図1)。アジア諸国・地域でのCCUSの発展に向け、2021年6月にASEAN10カ国および、米国・豪州・日本の13カ国で『アジアCCUSネットワーク』が発足し、100を超える国際機関や企業などが活動に参画しています。世界的に脱炭素への動きが加速するなか、化石燃料の需要が残るアジアでCCUSが果たす役割は非常に大きいと考えられ、今後の普及と脱炭素化への貢献が期待されます。
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