金融市場NOW

“脱炭素社会”に向け 液化天然ガス(LNG)に注目集まる

2021年09月21日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

排出削減に取り組む各国がLNGの確保へ、需要拡大で価格は急上昇

  • 国際的に地球温暖化への意識が高まる中、石油や石炭に比べCO₂等の排出量が少ないLNGが注目されている。
  • エネルギーの多くを石炭に頼るアジア諸国・地域の新興国を中心にLNGへの移行が予想される。
  • “排出量ゼロ”ではないLNGに逆風の可能性もあるも、排出削減に取り組む各国の需要は継続か。

CO₂等の排出量の少なさでLNGに注目集まる

国際的な地球温暖化対策として、太陽光や風力などの再生可能エネルギーのさらなる活用が求められています。地球温暖化の主な要因となる二酸化酸素(CO₂)などの排出量が多いエネルギー資源に逆風が吹く一方で、石炭や石油に比べて排出量が少ない液化天然ガス(LNG)は、“脱炭素社会”への移行期間中の“低炭素エネルギー”として存在感を高めつつあるようです。

  • 地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量ゼロを実現する社会。

石炭からLNGへの急速な移行が予想される

グラフ1:石炭消費の大半をアジア諸国・地域が占める

  • ※国別石炭消費量(2019年)
  • 出所:経済産業省 資源エネルギー庁の資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

LNGは主に発電所や工場の燃料として利用され、世界の消費量は増加傾向にあります。欧米の消費量は概ね横ばい圏で推移しているのに対し、アジア太平洋圏の消費量はおよそ30年間で6倍弱にまで増加しました。世界的に温暖化対策への意識が高まるなか、今後は、エネルギー資源の多くを石炭に頼るアジア諸国・地域(グラフ1)が、“排出量ゼロ”に向けた次のステップとして、主力エネルギーをLNGに移行する動きが急速に進むものとみられます。

各国からのLNGのおう盛な需要は当面継続

11月に『国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)』を控えています。COP26ではCO₂等排出削減への取り組みや実現の可能性につき、各国の積極的な姿勢が求められるとみられており、経済成長と環境対策を同時に進めたい中国などがLNGの調達を大幅に増やしているようです。需要の急拡大を背景にLNG価格は2020年末より上昇基調を強め、石炭との価格差も拡大しています(グラフ2)。一方、LNGのCO₂等排出量はゼロではなく、脱炭素化が進む欧州から『(LNGへの移行は)脱炭素社会の実現にはつながらない』との声もあり、LNGに逆風となる可能性もありそうです。それでもLNGのCO₂等排出量は石炭・石油に比べ3~4割程度少なく(グラフ3)、LNGへのエネルギー移行は脱炭素社会の実現に向けたCO₂等排出削減対策の1つであると考えられ、排出削減に取り組む各国からのおう盛な需要は当面継続するものと思われます。

グラフ2:需要の急拡大からLNG価格の上昇が続く

  • ※LNG価格(北東アジアLNGスポット価格)と石炭価格(オーストラリア産)の推移
  • 出所:経済産業省 資源エネルギー庁の資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:LNGはCO₂等の排出量が相対的に少ない

  • ※石炭を100とした場合の排出量比較(燃焼時)
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

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