金融市場NOW

“バイデン政権”誕生で地球温暖化対策に進展期待

2020年11月16日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

大型インフラ投資を通じ、米国内で大規模な雇用創出も

  • 米国が『パリ協定』からに正式に離脱。世界2位のCO2排出国である米国の協定離脱により、協定が掲げる目標の実現が困難になるとみられていた。
  • バイデン氏の当選が確実となり、同氏は協定への復帰を表明。米国の復帰により世界の温暖化対策の進展と、環境対策を通じた大規模な雇用創出も期待される。

米国がパリ協定から離脱

11月4日、米国は、地球温暖化防止の国際的な枠組みである『パリ協定』からに正式に離脱しました。トランプ米大統領は、「他国に利益をもたらし、米国に不利益を強いる」と経済への悪影響を強調し、2017年に協定からの離脱を表明していました。

米国の離脱は温暖化対策へ大きな打撃に

2016年11月に正式発効されたパリ協定は、新興国を含む、約190の国や地域が批准しています。協定が掲げる『産業革命からの気温上昇を2度未満に抑えることを目標とし、1.5℃以下に抑制することを努力目標とする』の達成には、2050年までに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることが必要とされます。中国に次ぐ世界2位の排出国である米国の離脱により、協定が掲げる目標の実現が困難になるとみられていました(グラフ1)。

グラフ1:中国、米国のCO2排出シェアが大きい

2018年

2030年

  • ※世界のエネルギー起源CO2排出量比較
  • *1 温室効果ガス排出量の約9割をエネルギー起源CO2(燃料の燃焼などで発生・排出されるCO2)が占める。
  • *2 四捨五入のため合計が100%にならない場合があります。
  • 出所:環境省の資料をもとにニッセイアセットマネジメントが作成

“バイデン政権”はパリ協定への復帰を表明

グラフ2:地球温暖化が進行している

  • ※世界の年平均気温(基準値との差)の推移
  • *各年の平均気温の基準値(1981〜2010年の30年の平均値)からの差を示しています。
  • 出所:気象庁のデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

世界の気温はこの100年で約1.0度上昇しています(グラフ2)。全国地球温暖化防止活動推進センターによれば、2030年の上昇気温は約1.5度、2050年は約2度と予測されており、温暖化防止に向けた対策強化が急がれます。世界では、欧州連合(EU)と日本が2050年までに、今年9月には中国が2060年までに温室効果ガスを実質ゼロとする目標を掲げています。また米国では、大統領選で当選が確実となったバイデン氏が、就任初日にパリ協定への復帰を表明しました。同氏は就任後に主要排出国による首脳会議を招集し、削減目標について協議を行う意向を示しており、米国の離脱により停滞が懸念された温暖化対策の進展が期待されます。環境対策を重要政策とする“バイデン政権”では、再生可能エネルギー、環境インフラ、電気自動車などの産業への支援が想定され、大規模な雇用創出が期待されます。環境関連産業の株価は、バイデン氏当選確実を織り込み堅調に推移しており、“環境”は“バイデン政権”下で、株式市場の注目のテーマとなりそうです。

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