金融市場NOW
減少する世界の貿易量や航空貨物需要
2019年06月10日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
米中貿易摩擦で中国の需要が減少
- 2019年1~3月期の世界の貿易量(前年同期比)は37四半期ぶりの水準に低下。4月の世界の航空貨物需要(前年同月比)は再びマイナス圏に。米中貿易協議の動向如何では更に減少する可能性も。
- IMF(国際通貨基金)は米中貿易摩擦が過熱化すれば2020年の世界経済の成長率は0.5ポイント下押しされると指摘。
米中貿易摩擦が、世界の貿易量や航空貨物需要等に影響を与えています。
- 世界の貿易量が急減しています。オランダ経済政策分析局(CPB)によると、2019年1~3月期の世界の貿易量(前年同期比)は0.4%増と、37四半期(9年3ヵ月)ぶりの水準まで急減速しています(グラフ1)。
- 世界の航空貨物需要も落ち込んでいます。国際航空運送協会(IATA)によると、4月の世界の航空貨物需要(重量×距離)は前年同月比4.7%減と、3月の0.1%増から再びマイナスに転じました。地域別では世界の貨物需要の約35%(2018年)を占め、最大の市場であるアジア・太平洋が同7.4%減と最も落ち込みが大きく、2018年11月以降6ヵ月連続で前年度を下回っています。中国の貨物需要の減少が影響しているようです(グラフ2)。
- 中国から米国に貨物を運ぶコンテナ船の運賃が2018年11月末をピークに下落基調をたどっています。中国(上海)発・米国(ロサンゼルス)向け40フィートコンテナ1個あたりのスポット(随時契約)運賃は、5月末で1,730ドルと2018年6月末以来の低水準に下落しています(グラフ3)。トランプ米政権の中国製品への制裁関税発動を前にした駆け込み需要の反動や中国の2月の春節(旧正月)の影響の他、トランプ米政権が中国からの輸入品2,000億ドル(約22兆円)分に課していた関税率を引上げ、貿易摩擦が再燃したことも要因となっているようです。
IMFは6月5日、米中貿易摩擦による世界経済への最新の影響分析を公表しました。摩擦が過熱化すれば、2020年の世界経済の成長率が0.5ポイント下押しされると警告しました。トランプ米政権は制裁対象としていない3,000億ドル(約33兆円)分の中国製品にも新たに最大25%の関税を課すと公表しています。米中貿易摩擦の過熱化や長期化懸念が強まれば、世界の貿易量等は更に減少・低下傾向をたどり、IMFの警告のように世界経済の成長率は大きく鈍化するものと思われます。
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