金融市場NOW
最近の原油価格動向
2019年03月25日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
OPECやEIAの見通しでは供給が需要を上回る。OPECの減産継続決定時期は先送り。
- 2018年10~12月期に大きく下落した原油価格は、OPECプラスの減産等の効果もあり、底値から38%程度値を戻す(終値ベース、2019年3月15日現在)。
- 2019年4月のOPEC総会の開催が見送られたため、7月以降の減産継続の是非については6月のOPEC総会で協議される見込み。
2018年10~12月期に下落するも、戻り基調
2018年10~12月期に、世界景気減速による原油需要減少懸念から原油価格は大きく下落しました。OPEC(石油輸出国機構)やEIA(米国エネルギー情報局)が原油の供給が需要を上回るとの見通しを公表したことも価格下落を後押しすることとなりました。原油価格の下落を望まないOPECプラス(OPEC加盟国+ロシア等のOPEC非加盟原油生産国)は2018年12月のOPEC総会において全体で日量120万バレルの減産を決定しました。当初は計画通りに減産が実施されるか不明だったこともあり、価格下落を止めるに至りませんでしたが、世界景気の減速懸念の後退による株高等を受けて、2018年12月24日を底として戻り基調となっています【グラフ1】。
現在の減産状況
2018年12月のOPEC総会で決定された減産量は全体で日量120万バレルでした。OPEC加盟国ではイラン、リビア、ベネズエラの3か国が減産を免除されましたが、その3か国は米国による制裁や政情不安等の影響もあるため、意図せざる減産となっており、2019年2月末時点で3か国合計の減産量は日量120万バレルとなっています。さらに、サウジアラビアが日量72万バレルの減産を実施しており、減産の基準となる2018年10月時点と比べて、OPEC加盟国全体で日量約182万バレルの減産と計画以上となっています(別途ロシア等のOPEC非加盟原油生産国も減産を実施しています)。
表:OPECプラスの生産量の状況
2018/10 | 2019/02 | 差異 | |
---|---|---|---|
サウジアラビア | 1072 | 1000 | -72 |
イラク | 473 | 478 | 5 |
UAE | 300 | 315 | 15 |
クウェート | 280 | 275 | -5 |
ナイジェリア | 160 | 158 | -2 |
アンゴラ | 155 | 151 | -4 |
その他 | 217 | 218 | 1 |
イラン※ | 340 | 265 | -75 |
ベネズエラ※ | 130 | 109 | -21 |
リビア※ | 108 | 84 | -24 |
OPEC合計 | 3235 | 3053 | -182 |
ロシア | 1164 | 1155 | -9 |
需給に関する最新の見通し
グラフ2:原油の需給動向及び今後の見通し
EIAが3月12日に公表した最新の見通しでは2019年度(2019年1月~12月)は供給が需要を日量約18万バレル上回る見込みとなっています【グラフ2】。2019年1月~3月期はOPECプラスが減産を開始したことから、一時的に供給不足となる見込みですが、4月~6月期以降は米国・カナダを中心に増産が見込まれており、供給超過傾向が続きそうです。
今後の展開
OPECプラスは7月以降の減産継続の是非について、4月に協議を行うのは時期尚早と判断し、4月のOPEC総会が見送られました。6月の総会で減産継続の是非が協議される見込みですが、減産継続の是非が先送りされたことは、原油相場を不安定にさせる要因の1つとなりそうです。
金融市場動向
関連記事
- 2020年12月23日号
- 【金融市場動向】OPECプラス 減産規模を縮小
- 2020年06月17日号
- 【金融市場動向】足元の原油価格は堅調に推移
- 2020年04月17日号
- 【金融市場動向】足元で低迷が続く原油価格
- 2020年04月16日号
- 【金融市場動向】NY金先物価格が約7年半ぶりの高値に
- 2019年07月31日号
- 【金融市場動向】金価格が約6年ぶりの高値水準に
「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点
当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。
【当資料に関する留意点】
- 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
- 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
- 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
- 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
- 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。