金融市場NOW

金価格が約6年ぶりの高値水準に

2019年07月31日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

先行き不透明感が強い状態が続けば更に騰勢を強める可能性も

  • 金価格(ドルベース、スポット価格)が約6年ぶりの高値水準に上昇。欧米等主要国の金利低下や、イラン核問題を巡る地政学リスクの高まり、米中貿易摩擦再燃懸念等が要因か。
  • 金価格に対して出遅れ感のあった銀価格も上昇。先行き不透明感が強い状態が続けば更に騰勢を強める可能性も。一方、中国経済の「先行指標」とされる銅の価格は低迷。

(1)金価格が約6年ぶりの高水準に

グラフ1:金価格と米10年国債金利

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

金価格が5月末頃を境に上昇基調入りし、直近ピーク時よりやや下落してはいるものの、7月26日時点では2013年8月以来約6年ぶりの高値水準となっています(グラフ1)。(1)米中貿易摩擦等による世界景気の後退懸念等を受けて欧米等の金利が低下基調入りし、金利のつかない金の相対的な価値が上がるとの期待感が強まったこと、(2)イラン核問題をめぐる地政学リスクの高まりで、資金の逃避先として有事に強いとされる金が見直されたこと(「有事の金」)、(3)6月末の米中首脳会談で閣僚級会議の再開が合意されたものの、交渉の進展状況によっては貿易摩擦が再燃し、先行きの不透明感が再び強まるとの見方等が要因になっているものと思われます。「有事の金」の例として、リーマン・ショック時の金価格と株価の動向を挙げることができるものと思います。NYダウは2007年10月9日を高値に、リーマン・ショック等を要因に2009年3月9日にかけて54%下落しました。しかし金はこの間25%上昇し、株価と対照的な動きとなりました。

(2)金のETFへの資金流入加速

グラフ2:金のETFの運用資産残高

  • 出所:WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

金価格の上昇を受けて金のETF(指数連動型上場投資信託)の残高が増加しています。2019年6月末の運用資産残高は前月から146億ドル(14%)増え、1,154億ドル(約12.6兆円)となりました。月間の増加額としては約7年ぶり、残高としては約6年ぶりの高水準を記録しました(グラフ2)。

(3)銀価格も上昇・銅価格は低迷

グラフ3:金・銀・銅価格

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成

金価格に連動して売買されやすいとされる銀の価格は、出遅れ感等から7月以降上げ足を速め、足元は約1年ぶりの水準まで上昇しています。地政学リスクの高まり等、先行き不透明感が強い状態が続けば、金や銀の価格が一段高することも考えられます。一方、自動車や電子機器等に使う銅の価格は低迷しています。世界の銅消費量の半数近くを中国が占める(2017年)ことから、銅価格は中国経済の「先行指標」とされることがあります。米中貿易摩擦の影響等で中国経済は減速傾向を続けており、その影響が銅価格の動きに表れているものと思われます(グラフ3)。

  • 金及び銀価格(ドルベース)はブルームバーグ社が算出する現物スポット価格、銅価格(ドルベース)は先物(COMEX:NY商品取引所)価格

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