金融市場NOW
世界の住宅価格高騰に沈静化の兆し
2019年03月04日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
金利の低下が住宅価格を下支えか
- 米ダラス連銀が公表した2018年7~9月期の世界の住宅価格(前年同期比)は約3年ぶりの低水準に。上昇の勢いが強かった国ほど調整率も大きい。
- 住宅価格の沈静化でインフレ懸念が後退すれば、中央銀行の政策余地が広がる可能性も。米国を中心とする世界的な金利低下の動きが続けば、住宅価格の調整も緩やかなものとなろう。
世界の住宅価格が下落傾向に
米ダラス連銀が1月に公表した住宅価格指数(主要23ヵ国対象)は、2018年7~9月期時点で前年同期比3.9%の上昇と、前期に続き約3年ぶりの低水準となりました。同指数の上昇率は2017年4~6月期の5.5%をピークに低下傾向を続けています(グラフ1)。住宅価格下落の背景には、価格高騰で取得を諦める家計が増えたことや、中央銀行の利上げによるローン金利の上昇で住宅投資の魅力が薄れたこと等があるものと思われます。
2009年頃をボトムに上昇傾向を続けた住宅価格動向を受け、一部ではリーマン・ショック前のような住宅バブルの発生やその後の崩壊、景気後退を懸念する見方もありました(グラフ1)。住宅価格の高騰が沈静化しインフレ懸念が後退すれば、中央銀行の金融政策余地が広がる可能性もあります。
上昇率が大きい国ほど調整も大きく
国別では、上昇の勢いが強かった国ほど調整も大きくなっています。上昇率(前年同期比)が一時10%を超えていた豪州やスウェーデンは、2018年7~9月期時点では下落に転じています。マイナスとなるのは約6年ぶりです(グラフ2)。
2018年7~9月まで比較的堅調に推移していた米国もその後は調整局面入りしているようです。住宅価格の月次動向を示す代表的な指標であるS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(20都市対象)の2018年12月の上昇率(前年同月比)は4.18%と、6年3ヵ月ぶりの水準まで低下しています。
金利低下で住宅価格の下落は緩やかなものに
FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げの早期停止等、金融政策の正常化を急がない方針を示したことや、中国の景気減速の鮮明化等を背景に、主要国の金利が低下傾向となっています(グラフ3)。金利低下を受け、米住宅ローン金利(30年固定金利)は2018年10月の4.75%を直近ピークに、2019年1月には4.37%まで低下しています。今後、住宅ローン金利低下の流れが主要国に広がれば、住宅価格の調整スピードが緩やかになる可能性もあります。
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