金融市場NOW
サービス収支黒字からみる可能性
2017年10月18日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
サービス収支が8月単月では初の黒字に。貿易はモノからサービスへ。
- 海外との各種サービス取引の収支を示すサービス収支が8月単月では初の黒字となった。世界的に貿易に占めるサービス貿易のシェアはモノ(財)貿易と比較して拡大傾向にある。
- 日本のサービス収支を構成する旅行収支や知的財産権等使用料を含むその他サービス収支は、黒字傾向(赤字縮小傾向)にあり、今後の国内産業や経済への好影響が期待される。
財務省が発表した8月の海外との財、サービス等の取引などを示す国際収支統計(速報)の中でサービス取引(サービス貿易)の収支を示すサービス収支が8月単月では初の黒字となりました。サービス収支は海上・航空等の旅客等の輸送に係る「輸送収支」、旅行者の滞在先での各取引に係る「旅行収支」、知的財産権等使用料などを含む「その他サービス収支」に分類されます。日本のサービス収支は赤字ですが、直近数年は減少傾向にあります。
日本のサービス収支は月次データでは年を通して赤字の状態が続いていましたが、2015年頃を境に次でも黒字化する月が現れるようになり、8月としては初めて黒字(202億円:速報)となりました。年次データではまだ赤字ですが減少傾向にあります(グラフ1)。中でもサービス収支を構成する旅行収支は黒字に転じています。その背景には、訪日外国人旅行者数が1,000万人を超えた翌年の2014年末頃から月次データが黒字化し、直近2年では年次データでも黒字となったこと(グラフ1)があげられます。またサービス収支を構成するその他サービス収支に含まれる知的財産権等使用料の収支についても2003年以降黒字を継続しています(グラフ1)。
世界に目を向けるとサービス貿易は年々拡大しており、モノ(財)の貿易額にはまだまだ及びませんがモノ貿易を上回る成長率で推移しています。国別では米国が世界最大のサービス輸出国となっており、英国やドイツなどが続いています(グラフ2)。こういった“サービス輸出大国”では、金融、知的財産権等使用料、専門業務サービスなどの新たなイノベーション(技術革新)の提供に強みを持っており、またITサービスやインフラシステム輸出などその国の産業の強みを生かす国もあります。明治維新以降、モノ貿易により経済成長を図ってきた日本においても、今やGDP(国内総生産)の約7割をサービス業が占めており、今後サービス貿易の拡大を目指し、サービス業の海外展開やインフラシステム輸出など、拡大する世界のサービス市場へ積極的に展開することで新たな経済成長の機会を探っていくことが期待されます。
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