金融市場NOW

日銀短観(2016年12月調査)の概要

2016年12月26日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

大企業製造業 1年半ぶりに改善

日本銀行が12月14日に発表した2016年12月(回答期間:2016年11月14日~2016年12月13日)の全国企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)がプラス10となり、前回の9月調査(プラス6)から4ポイントの改善となりました(表1)。改善は2015年6月調査以来、1年半ぶりです。米国などの海外経済の回復や米大統領選後の世界的な株高や原油市場の回復が景況感を押し上げたものの、先行きは慎重な見方が根強いようです。以下、概要です。

  1. 大企業製造業は、国際商品市場の改善により景況感が上向いたことなどから石油・石炭製品や非鉄金属などが大幅に改善し全体をけん引しました。一方、世界的な鉄鋼・海運業不況の影響で、鉄鋼や造船・重機等は悪化しました。大企業製造業の3ヵ月先の業況判断は、2016年度の事業計画の前提となる想定為替レートが前回調査よりも円高・米ドル安方向に修正されたこともあり(表2)、最近のプラス10からプラス8へ低下しています。
  2. 大企業非製造業は、プラス18と前回と同様(表1、グラフ1)。円高進行による訪日外国人(インバウンド)消費の鈍化で小売りの景況感が悪化となりました。一方で、都市再開発が進んだことから建設関連が高水準を維持し、また対事務所サービスや、電気・ガスなどの改善が目立ちました。
  3. 2016年度の全規模全産業の設備投資計画は前年度比1.8%増となり、9月調査比では0.2ポイントの小幅な上方修正となりました。なお、大企業は製造業が11.2%増、非製造業が2.5%増を計画しており、引き続き過去の平均よりも高い水準で推移しています(表3)。

表1:業況判断DI(2016年12月)

(「良い」-「悪い」、ポイント)

(*1)2016年9月調査比、(*2)2016年12月(最近)比
出所:日銀短観データを基にニッセイアセットマネジメントが作成
  2016年9月調査 2016年12月調査
最近 最近 先行き
変化幅(*1) 変化幅(*2)
大企業 製造業 6 10 4 8 -2
非製造業 18 18 0 16 -2
全産業 12 14 2 13 -1
中堅企業 製造業 3 6 3 2 -4
非製造業 15 16 1 9 -7
全産業 10 12 2 7 -5
中小企業 製造業 -3 1 4 -4 -5
非製造業 1 2 1 -2 -4
全産業 0 2 2 -3 -5

グラフ1:大企業および中小企業の業況判断指数の推移

大企業および中小企業の業況判断指数の推移
※2017年3月は2016年12月調査による先行き見通し
出所:日銀短観データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

表2:想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)

※事業計画の前提となっている想定為替レート
出所:日銀短観データを基にニッセイアセットマネジメントが作成
  2016年度
  上期 下期
2016年9月調査 107.92 108.44 107.42
2016年12月調査 104.90 106.52 103.36

表3:全規模全産業の設備投資計画

(前年度比、%)

(*3)2016年度計画の9月調査からの変化幅
出所:日銀短観データを基にニッセイアセットマネジメントが作成
全規模合計 2015年度 2016年度(計画) 修正率(*3)
製造業 9.1 5.6 -0.5
非製造業 2.9 -0.1 0.6
全産業 5.0 1.8 0.2

【参考レポート】日銀短観(2016年9月調査)の概要(2016年10月7日号)

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