金融市場NOW
日銀短観(2016年6月調査)の概要
2016年07月22日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
中堅・中小企業が悪化
日本銀行が7月1日に発表した2016年6月(回答期間:2016年5月30日~2016年6月30日)の全国企業短期経済観測調査(短観)は、注目度が高い大企業製造業が横ばいだったものの、中堅・中小の製造業や非製造業は軒並み悪化となりました。今回の調査は6月24日に決定した英国の欧州連合(EU)離脱の影響をほとんど織り込んでいないものとみられます。以下、概要です。
- 大企業製造業の業況判断DI(景況感「良い」から「悪い」を引いた割合)はプラス6で、前回(3月)調査と同様。今回調査における大企業製造業の2016年度の想定為替レートは1ドル=111円41銭で前回調査より6円ほど円高方向に修正されました(表2)。足元の一段の円高が、自動車等の業種の輸出収益を悪化させることも想定されます。(表1、グラフ1)
- 中堅・中小企業は製造業・非製造業ともに悪化となり(中堅企業の製造業の業況判断DIは4ポイント、非製造業は3ポイント中小企業の製造業は1ポイント、非製造業は4ポイント悪化)、円高による収益悪化懸念が根強く先行きも悪化しています。(表1、グラフ1)
- 大企業全産業の2016年度の設備投資計画は前年度比6.2%増と、前回調査の0.9%減から上方修正となったものの、昨年6月調査の2015年度計画(9.3%増)の水準を下回っています。製造業は12.8%とおおむね堅調な推移を示していますが、非製造業が2.7%と6月調査時点としては2011年度以来の保守的な計画となっています。英国のEU離脱問題が世界経済に与える影響が読み切れないこともあり、今後、慎重な投資姿勢に傾く大企業もあるとみられます。(表3)
表1:業況判断DI(2016年6月)
(「良い」-「悪い」、ポイント)
2016年3月調査 | 2016年6月調査 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
最近 | 先行き | |||||
最近 | 変化幅※1 | 変化幅※2 | ||||
大企業 | 製造業 | 6 | 6 | 0 | 6 | 0 |
非製造業 | 22 | 19 | -3 | 17 | -2 | |
全産業 | 13 | 12 | -1 | 12 | 0 | |
中堅企業 | 製造業 | 5 | 1 | -4 | 0 | -1 |
非製造業 | 17 | 14 | -3 | 10 | -4 | |
全産業 | 12 | 9 | -3 | 6 | -3 | |
中小企業 | 製造業 | -4 | -5 | -1 | -7 | -2 |
非製造業 | 4 | 0 | -4 | -4 | -4 | |
全産業 | 1 | -1 | -2 | -5 | -4 |
表2:大企業の経常利益見通し
(円/ドル)
大企業 | 2016年度 | ||
---|---|---|---|
上期 | 下期 | ||
2016年3月調査 | 117.46 | 117.45 | 117.46 |
2016年6月調査 | 111.41 | 111.46 | 111.36 |
表3:大企業の設備投資計画
(前年度比、%)
大企業 | 2015年度 | 2016年度 (計画) | 2016年度(計画)*3 | |
---|---|---|---|---|
製造業 | 8.4 | 12.8 | 3.1 | |
非製造業 | 1.0 | 2.7 | -2.9 | |
全産業 | 3.4 | 6.2 | -0.9 |
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