金融市場NOW

労働生産性 先進国で最低

2016年12月07日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

社会保障分野にも民間の力を

  • 日本の労働生産性※は主要先進7ヵ国で最も低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国34ヵ国の中でも21位。
  • 国内総生産(GDP)のおよそ7割を占めるサービス業の生産性が低いことが要因か。
  • 「民間の力」を生かすことや、労働効率を高める「道具」を利用していくことが生産性向上のカギに。
  • 労働生産性とは1人の労働者が働くことにより、どのくらい商品やサービスの付加価値を生み出したかを示す指標。GDPを労働者の総数で割って算出する。

日本の労働生産性が主要先進国の中でも最低水準となっています。日本生産性本部によると、2015年の日本の労働生産性(購買力平価換算)は7万2,446ドルとなり、主要先進7ヵ国で最も低く(グラフ1)、OECD加盟34ヵ国の中でも21位となっています。

日本の労働生産性が低い理由として、GDPのおよそ7割を占めるサービス業(グラフ2)の生産性が低いことがあげられています。製造業は機械化が進行していることから1人当たりの付加価値も高めやすい一方で、サービス業においては人手に頼る業務も多く、生産性を高めるのが難しいようです。また、サービス業の担い手の中心を、労働効率を高めにくい中小・零細企業が占めていることも、要因として考えられます。たとえば、介護の現場を見ても生産性の低い小規模な社会福祉法人が高齢者の暮らしを支えているのが現状のようです。諸外国と産業別(サービス業・製造業)で労働生産性の成長率を比較してみても、日本の製造業の労働生産性は向上しているものの、サービス業は停滞していることがわかります(表1)。

今後は、公的サービスに頼ってきた社会保障の分野に「民間の力」を生かすことや、情報技術(IT)や人工知能(AI)などの労働効率を高める「道具」を利用していくことが、より一層求められるようになりそうです。

グラフ1:日本の労働生産性は主要先進7ヵ国の中で最低

日本の労働生産性は主要先進7ヵ国の中で最低
※主要先進7ヵ国の労働生産性(購買力平価換算)2015年
出所:OECDのデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:日本のGDPの7割をサービス業が占めている

日本のGDPの7割をサービス業が占めている
※経済活動別名目国内総生産(2014年)
出所:内閣府のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

表1:日本の製造業の労働生産性は向上しているもののサービス業は滞っている

※主要先進国の産業別労働生産性成長率(2000~2014年の年平均)*カナダは産業別データなし。
出所:OECDのデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成
  米国 フランス イタリア ドイツ 英国 日本
全産業 1.2 0.7 ▲0.4 0.7 0.9 0.7
うち製造業 3.4 2.5 0.3 2.2 1.7 3.2
うちサービス業 1.6 0.7 ▲0.7 0.4 1.7 0.0

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