金融市場NOW

出生率が2年ぶりに上昇

2016年06月24日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

希望出生率1.8の実現に向けた政府の対策に期待

厚生労働省が5月23日に発表した2015年の人口動態統計で合計特殊出生率(以下、出生率)が1.46と2年ぶりに上昇に転じ、1994年以来の水準となりました(グラフ1)。出生数は5年ぶりに増加したものの、水準は過去2番目に低く、少子化に歯止めがかからないというのが現状です。

今回の出生率上昇の背景のひとつに、30歳以上の女性を中心とした出生数の増加が挙げられます。30歳代の出生数が2年ぶりに増加に転じたほか40歳代も 高い伸びとなり、女性が第1子を出産する平均年齢は30.7歳と過去最高を更新しました(グラフ2)。出生率は改善したものの15~49歳の女性人口の減 少は依然続いていることから、厚生労働省は「出生数は基調として減少していく」とみているようです。

安倍政権は、少子化対策の柱に待機児童の解消を据えています。5月中旬にまとめた「ニッポン一億総活躍プラン」では2025年度までに希望出生率※1.8 を実現する目標を掲げました。具体策として(1)保育の受け皿の整備、(2)保育士給与のアップなどが挙げられます(図1)。このような対策は出生率の引 き上げに一定の効果があるとみられています。

  • すべての国民が希望する子どもの数を持つことができた場合の出生率。

しかし、出生率が最後に1.8を記録した1984年は、初婚年齢や第1子の出産年齢が現在よりも4歳程度若かったため、政府の目標達成には晩婚化への対応や婚姻率の改善対策も不可欠であると考えられます。また、共働き世帯やひとり親世帯が出産・育児をしていくために長時間労働の削減や非正規雇用者の待遇改善など、今後の政府による環境整備が期待されます。

グラフ1:出生数と合計特殊出生率の推移

出生数と合計特殊出生率の推移グラフ
出所:厚生労働省のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:女性の平均初婚年齢と第1子の平均出産年齢

女性の平均初婚年齢と第1子の平均出産年齢グラフ
※1950年~2005年までは5年毎、それ以降は年次データ。
出所:厚生労働省「人口動態調査」のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

図1:一億総活躍プラン待機児童対策

一億総活躍プラン待機児童対策図
※1:合計特殊出生率
※2:希望出生率
出所:各種報道等を基にニッセイアセットマネジメントが作成

2025年度までに希望出生率を1.8へ

  • 2017年度までに待機児童をゼロへ
  • 保育士給与を月額平均6,000円アップ
  • 保育の受け皿整備で2017年度までに50万人分確保
  • 同一労働同一賃金で正規・非正規の賃金格差を是正
  • 幼児教育の無償化や無利子奨学金の拡充など教育負担を軽減

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