金融市場NOW

2015年7~9月期国内総生産(GDP)一次速報

2015年11月18日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

2四半期連続のマイナス成長

2015年7~9月期国内総生産(GDP)成長率(一次速報)は前期比-0.2%(年率-0.8%)と4~6月期に続いて2四半期連続のマイナス成長となりました。需要項目別では、設備投資の減少や大幅な在庫の圧縮(在庫投資の減少)が全体を押し下げています。特に在庫投資は寄与度で7~9月期実質GDP成長率(前期比)を0.5%ポイント(%pt)引き下げています。中国等の新興国経済の先行き不透明感等から企業部門が投資に慎重になった可能性があります。

2四半期連続マイナス成長が続くと、欧米では景気後退期入りしたと自動的にみなされますが、日本では成長率の増減のみでは判断できないとされています。主因が在庫調整であることや、在庫の取り崩しは次の四半期以降の生産や在庫増加につながりやすいこと、実質GDP(金額)の6割程度を占める個人消費がプラス転換していること等を考慮すると、減速してはいるものの景気後退期入りを懸念させるような状況にはないと思われます。

個人消費は前期比+0.5%(1,587億円増)と2四半期ぶりに増加に転じたものの、4~6月期の減少額(1,757億円減)を埋め切れていません。雇用環境の改善や賃上げによる給与増等はあったものの、食料品の値上がり等により家計の節約志向が強まった可能性もあります。

住宅投資は3四半期連続でプラスとなっていますが、4~6月期より減速しています。杭打ちデータ流用問題が広がりを見せつつあり、買い控えを誘発させるような場合には住宅投資に悪影響を与えることも考えられます。

設備投資は前期比-1.3%と2四半期連続の減少となっています。日銀短観では設備投資に前向きな姿勢が示されており(※)、今後増勢を取り戻すのか注目されるところです。

  • 2015年9月期の全規模・全産業の2015年度設備投資計画額(土地投資含む)は前年度比6.4%増。

輸出は訪日消費(インバウンド消費)の活発化によるサービス輸出の増加等を受けて2四半期ぶりに増加しています。

グラフ1:実質GDP成長率(前期比年率)推移

出所:内閣府データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

市場への影響と今後の見通し

安倍首相は経済政策であるアベノミクスの推進に向け、「新三本の矢」を発表しました。その中で、GDPを2020年頃に2014年比約2割増の600兆円に増やすことを目標の一つに掲げました。

景気後退期入りを懸念させるような内容ではないと思われますが、今回のGDP統計により2四半期連続経済が減速していることが確認されたことから、今後市場では2015年度補正予算に対する期待感が一段と高まる可能性もあります。日銀の追加金融緩和観測とともに株式市場等の下支え要因となることも考えられます。

表1:GDP内訳

単位:前期比%、*=前期比%pt、**=前期比年率%
出所:内閣府データを基にニッセイアセットマネジメントが作成
  2015年
1~3月期 4~6月期 7~9月期
実質国内総生産(GDP) 1.1 -0.2 -0.2
前期比年率** 4.6 -0.7 -0.8
個人消費 0.4 -0.6 0.5
住宅投資 2.0 2.4 1.9
設備投資 2.4 -1.2 -1.3
民間在庫(寄与度)* 0.5 0.3 -0.5
輸出 1.9 -4.3 2.6
輸入 1.9 -2.8 1.7
内需寄与度* 1.2 0.0 -0.3
外需寄与度* 0.0 -0.2 0.1
名目国内総生産(GDP) 2.2 0.2 0.0
前期比年率** 9.0 0.6 0.1

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