金融市場NOW

活発なインバウンド消費

2015年10月28日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

概要:2015年7~9月期は訪日外国人客数・訪日消費額とも過去最高

円安や免税品の拡大、ビザ(査証)発給要件の緩和等を背景に、訪日外国人による訪日消費(インバウンド消費)が活発化しています。2015年7~9月期は客数・消費額ともに過去最高となりました(グラフ1)。中国発の世界景気の先行き不透明感等により生じた金融市場の混乱が、訪日消費に悪影響を及ぼすとの見方もありましたが、9月末時点では懸念すべき影響は出ていないようです。

訪日消費の拡大を主に支えているのは中国からの訪日客です。一度に大量に買うことからその消費行動は俗に「爆買い」と言われています。2015年7~9月期の消費額約1兆円の内、約47%は前年同期比で約2.5倍に拡大した中国人客によるものです(グラフ2)。中国についても、8月下旬にかけ急落した中国株式は追加金融緩和等のテコ入れ策を受けて落ち着きを取り戻しており、訪日消費への悪影響は出ていないようです。10月25日には、羽田空港と中国各地を結ぶ国際線がこれまでの2倍を超える1日40便に増便されました。中国人客は今後更に増加することが予想されます。

政府は訪日外国人客数を2020年に2,000万人、2030年に3,000万人まで拡大させる目標を掲げていますが、2,000万人到達は今年中に達成出来るかも知れません(グラフ3)。2014年時点での日本の外国人旅行客受入れ人数は世界で22番目、1位フランス(約8,400万人)の15%程度に留まっており(グラフ4)、拡大余地は大きそうです。2015年7~9月の訪日満足度調査では「大変満足」「満足」の合計が約92%、日本再訪意向では「必ず来たい」「来たい」が約93%を占めています。交通インフラの整備等、受入れ体制の充実等を通じて訪日客数・訪日消費は今後も増加し続けるものと思われ、消費増税後低迷を続ける個人消費の下支え役になることも期待されます。

訪日消費額について

2015年7~9月期の訪日外国人客による消費額は前年同期比約82%増の約1兆9億円となり、四半期ベースで初めて1兆円の大台に乗せました(グラフ1)。2015年1~9月の累計では前年同期比77%増の約2兆6千億円と過去最高を記録した昨年実績(約2兆300億円)を超え、年間では3兆円を超える勢いとなっています。

訪日客1人当たりの旅行支出(観光・レジャー目的)も増加しており、前年同期比で約18%増えています。中国人客は宿泊日数の増加等により同約19%増となっており、旅行支出額約29万円の内の4割強が買物代に充てられています(グラフ5)。

訪日外国人客数について

2015年7~9月期の訪日客数は前年同期比約54%増の約535万人と過去最高を更新しました(グラフ1)。中国客が同約2.1倍の約166万人と大幅に増加し(グラフ6)、全体に占める比率は約31%と昨年同期の約22%より拡大しています。2015年1~9月合計の全体の訪日客数は前年同期比約49%増の約1,450万人となっています(グラフ3)。

グラフ1:訪日外国人客数・訪日消費額推移

出所:観光庁、日本政府観光局(JNTO)データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:訪日消費額主要国・地域別内訳

出所:観光庁、日本政府観光局(JNTO)データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:訪日外国人客数推移と政府目標

出所:観光庁、日本政府観光局(JNTO)データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ4:諸外国の外国人旅行者受入数

出所:観光庁、日本政府観光局(JNTO)データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ5:主要国・地域別費目別一人当たり支出(観光・レジャー目的)

出所:観光庁、日本政府観光局(JNTO)データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ6:主要国・地域別訪日外国人客数及びその増減

出所:観光庁、日本政府観光局(JNTO)データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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