金融市場NOW
デンマーク・カバード債券と足元の投資環境(2)
2020年06月29日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
足元のデンマークの投資環境
新型コロナウイルスの世界的感染拡大は未だ収束への道筋が不透明なものの(グラフ4)、欧米などの主要国は感染第二波に注意しながら、経済活動を再開しつつあります。デンマークは、国内におけるウイルス感染拡大に歯止めをかけるため、欧州諸国ではイタリアに次ぎ2番目にロックダウン(都市封鎖)宣言を行いました。ウイルス感染によるダメージを受けたのはデンマークも例外ではありませんが、早期の対応が功を奏し、デンマークの感染者数は欧米の主要国などと比較しても低い水準に抑えられているようです(グラフ5)。4月6日、デンマークは他国に先駆けてロックダウンを解除することを公表し、4月中旬から行動制限の緩和に動き出しました。
4月を底に製造業の景況感が改善する一方、サービス業などの非製造業では落ち込みが大きく、未だ回復の兆しが見られていません(グラフ6、7)。今後もソーシャルディスタンスの確保は、人と接することが多いサービス業などで回復の重荷になるとみられますが、ロックダウンの解除が進むなか、デンマーク政府による各種企業支援も支えに、非製造業の回復が注目されます。
デンマークは社会保障が充実しているといわれています。例えば、解雇された場合などには、失業保険から最長2年間にわたり従前の給与の90%を上限に給付金が支払われます。また、非正規雇用労働者についても、原則として正規雇用労働者と同じ待遇が確保されています。
失業保険は、完全失業者だけが支給の対象となるのではなく、パートタイム労働等で収入を得ながらも失業給付を受けることができます。失業率が6%を超えた景気後退局面でも、住宅ローン延滞率の上昇は限定的となっており(グラフ8)、今後の景気低迷により懸念される住宅ローンの延滞率の上昇も、小幅にとどまるものと考えられます。
また、ロックダウン等の影響により、サービス業などを中心に一時解雇が急増する一方、失業率は他の欧州諸国に比べ低くなっています(グラフ9)。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、デンマーク政府が早急に手厚い緊急支援策を講じたことが背景にあげられます(表1)。
デンマークが迅速に手厚い支援をできた理由として、租税公課が相対的に高く大胆な施策を講じる余裕があったことや、政府の財務健全性の高さが考えられます(グラフ10)。
表1:デンマーク政府による主な経済対策
企業向け固定費一時給付 | 予算規模:総額653億デンマーク・クローネ(GDPの2.8%) |
---|---|
自営業者向け一時給付 | 予算規模:総額141億デンマーク・クローネ(GDPの0.6%) |
企業向けの資金の貸付 | 総額607億デンマーク・クローネ(GDPの2.6%) |
納税期限猶予 | 4~6月期の源泉所得税、労働市場貢献金の納税期限が4カ月間猶予。(大企業・中小企業向け) |
個人事業主の税金関係支払いの2~7カ月の延期 | |
失業者対策 | 新型コロナウイルス感染拡大に影響を受けた大量解雇者に対する職業斡旋や職業訓練対策 |
金融市場動向
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