金融市場NOW
デンマーク・カバード債券と足元の投資環境
2020年06月29日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
低水準が続く主要国国債の利回り
2018年後半以降、トランプ米大統領が保護主義的な通商政策を強めたことなどによる世界経済の先行き不透明感の高まりを背景に、主要国の国債利回りは低下基調をたどっています(グラフ1)。更に欧州や日本の中央銀行がマイナス金利政策を継続するなかで、新型コロナウイルスの世界的感染拡大による影響などもあり、主要国の国債利回りは引き続き低水準を維持するとみられます。
相対的に高い利回り水準を維持してきた米国も、2019年7月に利下げに転じ、直近の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)でも、2022年までゼロ金利が維持される見通しになっています。また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が6月のFOMCにおいて、イールドカーブ・コントロール(米国国債利回りに目標水準を設ける)の導入について言及していることからも、米国国債の利回りは当面低水準で推移することが予想されます。
日本やドイツなどの国債利回りがゼロやマイナス水準となっているなか、デンマーク・カバード債券※の利回りは、相対的に高い水準となっています(グラフ2)。デンマーク・カバード債券は、同国の国債と同程度の格付けを有するなど相対的に信用力が高いことに加え、国債を上回る残高を有することなどから流動性も高くなっています。
- 複数の住宅ローン等を担保として発行される債券。多数の住宅ローン等をまとめて裏付け資産とし、ローンの借り手から返済される元利金を、そのまま投資家に通過させて支払う仕組みの債券。発行体により信用補完がされているなどから相対的に信用力も高い。
足元のデンマーク・カバード債券の動向
デンマークは2012年7月にマイナス金利政策を導入し、現在も継続しています。2020年3月19日に通貨価値の維持のために0.15%の利上げを行ったことから、現在の政策金利は-0.6%となっています。2019年11月にデンマーク国立銀行(中央銀行)総裁が、向こう5~10年間はマイナス金利が続くことを示唆する発言を行っており、当面の間、マイナス金利政策が継続する可能性が高いものと思われます。マイナス金利政策導入後、一時的に利回りが上昇する局面もありましたが、デンマーク・カバード債券の利回りは低下基調で推移しています。
新型コロナウイルス感染拡大による金融市場の混乱により、デンマーク・カバード債券市場も3月中旬に大きく売られました(グラフ3下)。しかし、各国金融市場の落ち着きと歩調を合わせ、デンマーク・カバード債券市場も落ち着きを取り戻しています。
デンマーク中央銀行のデータによれば、デンマーク・カバード債券の外国人投資家の保有比率は2020年4月時点で34%となっています。足元では、各国の中央銀行が新型コロナウイルス対応として巨額の資金を供給しており、余剰資金が大量に金融市場に流れ込んでいるものと思われます。3月中旬に一時大きく売られたデンマーク・カバード債券ですが、その後金利は一転低下(債券価格は上昇)しています。潤沢な資金供給と低金利が継続するとみられる環境の下、相対的に利回りの高いデンマーク・カバード債券は、引き続き利回りを追求する外国人投資家を中心とした資金流入が見込まれることなどから、安定的に推移するものと思われます。
金融市場動向
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