金融市場NOW
イタリア政局の混迷は多方面に影響か
2018年06月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
イタリア連立政権の組閣協議で難航。再選挙の可能性も。
- 議会多数派による連立政権の組閣協議が難航し、イタリア政局が混乱。連立協議は継続されるも交渉次第では再選挙も。
- 議会多数派は支持率で上位をキープするが、再選挙となった場合には争点が注目される。組閣への再交渉の行方など方向性が見えるまではマーケットは落ち着かない展開が続くか。
大統領はEU懐疑派の経済財政相の指名に反対。議会多数派は再度組閣の協議へ
イタリアでは連立政権を模索する多数派政党(五つ星運動と同盟)により経済財務相に推薦されたEU(欧州連合)懐疑派のサボナ氏の指名をマッタレッラ大統領が拒みました。通常、イタリア大統領は米国などのように大きな権限を持たず、議員や各州の代表から間接選挙で選出され、象徴的な役割を務めており、政権与党と調整の上、首相の任命や議会の解散などを行っています。しかし、今回はEU離脱に繋がるような組閣であり、国民投票での条約破棄を禁止する憲法に抵触する可能性を考慮したものと思われます。大統領は代りに親EU派で財政規律を重んじる国際通貨基金(IMF)元高官のコッタレッリ氏を首相として暫定内閣を樹立し、2019年の早い時期に解散総選挙を行う方針を示しました。しかし、議会多数派は選挙での民意が反映されていないとして国民に共和国建国記念日に抗議デモを呼びかけるなど反発の姿勢を示し、政情不安からマーケットは大きく変動しました。その後、再度組閣に向けて交渉が進められる見込みとなったため、暫定内閣の組閣は一旦中止され、状況を見守る姿勢が示されました。再交渉の末、提出された組閣名簿に大統領が合意し、両院議会から信任を得られれば新政権がスタートします。ただし、再交渉がスムーズに進むかは不透明な状況です。再交渉が頓挫すれば、暫定内閣の組閣に動くことになりますが、議会多数派の反発姿勢から議会の信任は困難と思われます。その際に、大統領は議会を解散し70日以内に再選挙が行わることとなります。
政党多数派は直近支持率でもリード。再選挙では何が争点となるのか?
調査機関DEMOPOLISによると、5月23日時点の政党支持率は、五つ星運動が32.5%とトップで同盟が24%と続いています。民主党や中道右派勢力なども15%程度の支持率があり、再選挙で各党は何を争点とするかに注目が集まると思われます。結果次第で連立の枠組みが変更されることも予想されます。現状、ディ・マイオ五つ星運動党首は「ユーロ離脱を想定したことは一度もない」との姿勢で連立交渉が続けられていますが、EU離脱が再選挙の争点となることになれば、大きなリスク要因となりえます。組閣への再交渉開始で一旦マーケットは反発しましたが、サルビーニ同盟書記長は「EU規則が変わらなければ、EUに留まる合理性に乏しい」とも発言しています。スムーズに新政権の樹立となるか、それとも再選挙となるか、政局の方向性が見えてくるまではしばらくマーケットは落ち着かない展開が想定されます。
表:主な政党の直近支持率
調査機関 | 調査日(月/日) | 五つ星運動(%) | 同盟(%) | 民主党(%) | FI※(%) |
---|---|---|---|---|---|
DEMOPOLIS | 5月23日 | 32.5 | 24.0 | 17.0 | 11.0 |
SWG | 5月20日 | 31.1 | 24.5 | 19.1 | 9.7 |
DEMOS | 5月18日 | 31.1 | 22.1 | 17.6 | 13.2 |
TECNE' | 5月18日 | 31.6 | 23.2 | 18.2 | 12.8 |
EMG | 5月17日 | 31.9 | 21.8 | 18.1 | 12.9 |
金融市場動向
関連記事
- 2021年02月01日号
- 【金融市場動向】イタリアのコンテ首相が辞任
- 2020年05月12日号
- 【金融市場動向】イタリアはロックダウンの一部を解除
- 2019年11月27日号
- 【金融市場動向】イタリア経済が欧州経済回復の妨げに
- 2019年09月02日号
- 【金融市場動向】イタリアで新連立政権が発足
- 2019年06月04日号
- 【金融市場動向】低迷するイタリア経済
「金融市場動向」ご利用にあたっての留意点
当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、ニッセイアセットマネジメントが作成したものであり、特定の有価証券等の勧誘を目的とするものではありません。
【当資料に関する留意点】
- 当資料は、信頼できると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
- 当資料のグラフ・数値等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮しておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。
- 当資料のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。
- 手数料や報酬等の種類ごとの金額及びその合計額については、具体的な商品を勧誘するものではないので、表示することができません。
- 投資する有価証券の価格の変動等により損失を生じるおそれがあります。