金融市場NOW
イタリアのコンテ首相が辞任
2021年02月01日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
首相の辞任が解散総選挙につながる可能性は低い
- 新型コロナ後の復興計画を巡り、連立政権内で意見が対立。元首相レンツィ氏が率いるイタリア・ビバの連立離脱を契機として、コンテ首相が辞任へ。
- 大統領や多くの議員は解散総選挙を望んでおらず、新たな左派連立政権が発足する可能性が高い。
- 解散総選挙となった場合には再び反EU政権が発足する可能性もあり、EUとの関係悪化も。
コンテ首相が辞任
26日、イタリアのコンテ首相が辞任しました。イタリアでは左派による連立政権が組まれていましたが、少数政党のイタリア・ビバを率いる元首相レンツィ氏が新型コロナ後の復興計画には復興ファンドに加えてESM(欧州安定メカニズム)を最大限活用すべきであり政府の計画では不十分と批判し、コンテ前首相と対立しました。13日にはレンツィ氏が連立政権からの離脱を表明しました。連立政権は上院で過半数(161議席)を上回る173議席を確保していましたが、18議席を有するイタリア・ビバの連立離脱により、絶対多数を維持できなくなったことで政権基盤は脆弱なものとなりました。
解散総選挙の可能性は低いとみられる
イタリアでは大統領が議会の解散権を保有していますが、マッタレッラ大統領はコロナ禍での解散総選挙に否定的と見られ、解散総選挙の可能性は低いと思われます。2020年9月の国民投票により、次回選挙実施時から定数削減が決定されているため、早期の解散総選挙となれば失職する議員が多くなるものとみられます。解散総選挙による失職を回避したい多数の議員がコンテ前首相を支持すると見られていることも、解散総選挙の可能性が低いとされる要因の一つと考えられます。コンテ首相辞任の報道を受けて、イタリア10年国債金利は低下(価格は上昇)しました(グラフ1)。首相は辞任したものの解散総選挙は実施されず、左派連立政権が再び組閣されるとの見方が優勢となったものと思われます。
解散総選挙の場合は反EU政権の可能性も
解散総選挙となった場合には右派政党で反EU(欧州連合)の同盟が第一党となる可能性が高いと言われています(表1)。2019年8月まで同盟は連立政権の一員でしたが、予算案(財政赤字のGDP(国内総生産)比率)を巡り、欧州委員会と対立した前歴があります。同盟を中心とした政権が成立した場合には、EUとの良好な関係が再び悪化する可能性が高いものと思われます。足元の国債金利は低下傾向にあり、市場は解散総選挙のリスクを織り込んでいないとみられます。解散総選挙となった場合には、イタリアから投資資金が流出し、株式下落、金利上昇となることも想定されます。
表1:イタリアの政党支持率
(%)
政党名 | 政党支持率(1月23日時点) | 2018年上院選得票率 |
---|---|---|
同盟 | 23.4 | 17.6 |
民主党 | 20.3 | 19.1 |
イタリアの同胞 | 16.5 | 4.3 |
五つ星運動 | 14.6 | 32.2 |
フォルツァ・イタリア | 7.8 | 14.4 |
イタリア・ビバ | 2.8 | - |
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