金融市場NOW
低迷するイタリア経済
2019年06月04日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
2018年下期以降、景気の停滞が継続中
- イタリアのGDP成長率が低迷。3四半期連続のマイナス成長は免れたものの、IMF、OECD、イタリア政府は2019年の成長率予想を前年比0%近辺まで引き下げ。
- 中国の一帯一路政策に参加することを決定。外需を呼び込むことが目的か。
- 欧州議会選挙で財政拡大を公言する極右政党「同盟」が第一党に。
3四半期連続のマイナス成長は免れたが…
欧州第3の経済大国であるイタリアの2019年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率は前期比+0.2%となり、3四半期ぶりのプラス成長に回帰しました。2018年7~9月期、10~12月期ともに同-0.1%と景気後退の目安と言われている2四半期連続のマイナス成長となっていましたが、一旦は底打ちしたものと思われます【グラフ1】。しかし、IMF(国際通貨基金)やOECD(経済協力開発機構)のみならず、イタリア政府も2019年の成長率予想を前年比0%近辺まで引き下げており、景気低迷が意識される中、年後半にかけて予断を許さない展開となりそうです。
G7構成国として初めて中国の一帯一路に参加
イタリア政府が2019年予算案策定時に前提としたGDP成長率は前年比+1%であり、その水準が確保できなければ、財政赤字を対GDP比2.04%に収めるという目標を達成することはほぼ不可能になるとの見方が多くを占めているようです。2020年の予算案策定時に2019年と同様にイタリア政府と欧州委員会の対立が強まる可能性が高そうです。このような厳しい経済情勢を受けて、イタリア政府はG7(主要先進7か国)構成国として初めて中国政府の一帯一路政策に参加することを決定しました。米国や他のEU(欧州連合)諸国からは、国際社会の一部で一帯一路政策は中国が当該国に開発資金を貸し付けることで支配する「借金漬け外交」であるとの声があることに対する懸念や、中国の市場開放ペースの遅さに加え中国企業による買収急増に対する批判等はあるものの、外部からの資金導入により国内経済の低迷を打破することを優先したと見られています。しかし、これまでに成果が表れているものは多くはないため、イタリアの思惑通りに物事が進むことは考えにくく、最終的には米国や他のEU諸国の賛同を得られないばかりか、景気回復につながる可能性も低いのではないかとの声も聞かれます。
前回に引き続き極右政党の「同盟」が第1党に
表1:欧州議会におけるイタリア政党の議席数
政党名 | 議席数 |
---|---|
同盟(極右) | 28 |
民主党(中道左派) | 19 |
五つ星運動(大衆主義) | 14 |
フォルツァ・イタリア(中道右派) | 6 |
イタリアの同胞(保守・EU懐疑派) | 5 |
南チロル人民党(中道右派) | 1 |
5月26日に実施された欧州議会選挙において、サルビーニ副首相が率いる「同盟」がイタリアの第1党となる見込みです【表1】。サルビーニ副首相はユーロ圏の財政規律を無視してでも、財政支出(減税)を行いたいと公言しています。今回の選挙結果を受けて、財政支出拡大はイタリアの民意を反映しているとして、他国の首脳と財政規律ルールの緩和に向けた協議を行いたい旨表明しています。事前に期待されたほど極右政党は議席を獲得できなかったものの、一定規模の勢力を有していることから、サルビーニ副首相の影響力が強まり、財政規律を巡る混乱から、EU圏の景気回復への影響も意識され、ECB(欧州中央銀行)による利上げも後ずれする展開も想定されそうです。
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