金融市場NOW
国連の「持続可能な開発目標」企業も導入へ
2017年06月02日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
社会的認知度は未だ低く課題も
- 国連は2015年9月に15年間の行動計画として『持続可能な開発目標(SDGs)』を掲げた。
- 「SDGインデックス&ダッシュボード」は国連加盟国のSDGs達成状況をランキング。日本は18位。
- SDGsを自社の戦略に組み入れる企業もあるが、まだ社会的な認知度は低く、今後の課題は残る。
国際連合(以下、国連)は、地球と人々の暮らしをより良くするための目標を15年ごとに掲げています。
国際社会共通の成長目標『持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)』とは、2015年9月に国連加盟国193ヵ国が全会一致で採択した、2016年から2030年までの15年間の行動計画です。「誰も取り残さない」をスローガンに、「貧困の根絶」「教育の促進」「持続可能なインフラと産業」などの17の目標(表1)と、各目標をさらに細かくした169のターゲットから成り立っています。2015年に終了期限を迎えたMDGs(ミレニアム開発目標)が先進国の途上国援助がメインだったのに対し、その後継にあたるSDGsでは、エネルギー問題や海洋資源問題など、先進国も含めたすべての国が取り組むべき問題も対象となっています。
国連においてSDGsが採択されて1年が経過した2016年7月、ドイツ最大の財団であるベルテルスマン財団が、SDGsの進展状況の追跡などを目的に「SDGインデックス&ダッシュボード」を立ち上げました。そこには、世界銀行や国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)などのデータをもとに、入手可能な149ヵ国のSDGs達成状況のランキングと詳細な分析が掲載されています。SDGsのすべての項目につき達成できている国はまだなく、主要先進国(G7)の中でトップテン入りしたのは、ドイツと英国のみです(グラフ1) 。貧困国や発展途上国は下位にとどまりました。18位となった日本は、17目標中、達成は「教育の促進」、「水と衛生の確保」、『持続可能なインフラと産業』の3項目、一方で未達となったのは「貧困の根絶」、「ジェンダー平等」などの7項目です。
SDGsへの取り組みやその成果は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の評価軸としても活用されるようになりつつあり、自社の戦略に組み入れる企業も出てきています。世界全体として取り組むべき課題を理解したうえで、自社の事業開発やCSR(企業の社会的責任)の取り組みを進めていくということがますます重要になると考えられます。一方、まだ社会的な認知度は低いことや政府の方針・関与が希薄であること、政府の実施指針に対して企業として何をすべきか不明慮であるなどの意見もあり、取り組みに対する課題も多いようです。
表1:SDGsの17目標
1 | 貧困の根絶 | 10 | 国内・国際間の不平等の是正 |
---|---|---|---|
2 | 飢餓の根絶 | 11 | 持続可能な都市と居住 |
3 | 健康と福祉の促進 | 12 | 持続可能な生産と消費 |
4 | 教育の促進 | 13 | 気候変動の対策 |
5 | ジェンダー平等 | 14 | 海洋資源の保全 |
6 | 水と衛生の確保 | 15 | 陸域生態系・森林の保全 |
7 | エネルギーをクリーンに | 16 | 平和で包括的な社会の促進 |
8 | 適切な雇用の促進 | 17 | パートナーシップの強化 |
9 | 持続可能なインフラと産業 |
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