金融市場NOW

ECB理事会追加緩和決定

2016年03月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ECB(欧州中央銀行)決定内容

ECBは3月10日の理事会において、包括的な金融緩和を決定しました。昨年12月に、同年3月より開始した金融緩和策の拡大を決めたばかりですが、そこからわずか約3ヵ月で更なる緩和に踏み切りました。追加された緩和策の概要は以下の通りです。今回は利下げに加え、前回見送りとなった金融緩和の量の拡大も盛り込まれています。

  • 政策金利を年0.05%から0%に引き下げ。
  • 銀行が余剰資金をECBに預け入れた際に課す手数料(マイナス金利)を、従来よりも0.1%上乗せし、マイナス0.4%に拡大。
  • 毎月国債を中心に行っている資産購入の月額を、4月から200億ユーロ(約2.5兆円、1ユーロ:125円で換算、以下同じ)増額し、800億ユーロ(約10兆円)とする。
  • 量的緩和策の買入れ対象に金融機関を除く投資適格社債を含める。

ECBのドラギ総裁は理事会後の記者会見で、原油安の影響等から今後数ヵ月間は物価上昇率の低下を避けることは難しいと述べました。また、当面は追加利下げの必要性はないとの見解を示しました。

市場の反応と今後の見通し

ECB(欧州中央銀行)決定内容

10日の欧州金融市場(前日比)では、ドラギ総裁の会見を受けて当面の追加緩和は期待薄との見方が広がったこと等から、ユーロが対米ドルで上昇。また債券市場では、ドイツやフランスの国債の金利が短期債中心に上昇(価格下落)しました。株式市場(欧州株式市場全体の動きを示すSTOXX600指数)は下落しました。

今後の見通し

前回同様、今回も更なる金融緩和方針が示されると見込んでいた投資家の持ち高の解消等により、当面のユーロや株式市場等は乱高下することが予想されます。しかし、足元の物価動向をみると、原油安と経済成長率の鈍化で下落圧力が強まりつつあるようです。ドラギ総裁は今回の会見で物価上昇率の低下を避けることは難しいと述べており、物価下落のスピードが増す場合は再び追加金融緩和期待の相場展開になるものと思われます。

追加緩和により行き場を失った資金の一部が、相対的に金利や配当利回りの高い国の債券や株式、REIT市場に向かう可能性もあるとみています。

グラフ1:欧州株価とユーロ(対米ドル)の推移

欧州株価とユーロ(対米ドル)の推移グラフ
出所:ブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:ユーロ圏消費者物価(CPI)推移

ユーロ圏消費者物価(CPI)推移グラフ
出所:ブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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