金融市場NOW

ポルトガル政局の動向と反緊縮の流れ

2015年11月17日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

ポルトガル政局混迷化 反緊縮政権誕生の可能性

11月10日のポルトガル議会(一院制)において、財政緊縮策等を盛り込んだコエリョ首相の施政方針が過半数を占める野党連合等の反対で否決されました。コエリョ首相は債務問題で混乱に陥ったギリシャを引合いに出し緊縮財政の継続を訴えかけましたが、賛同を得ることが出来ず、同結果を受けコエリョ内閣は総辞職しました。

ポルトガルでは大統領が首相を指名します。憲法規定(※)により来年前半まで議会解散が出来ないため、カバコシルバ大統領はコエリョ氏を総選挙までの選挙管理内閣の首班として続投させるのか、最大野党社会党のコスタ党首を首相に指名するのかのいずれかの選択を迫られるものと思われます

  • 選挙後6ヵ月間、大統領任期満了前6ヵ月は議会解散が出来ない規定となっています。最近の選挙実施が今年10月、現大統領の任期が来年3月であり、現時点で議会解散・総選挙を行うことは出来ません。

同国の経済規模は約23百億米ドル(約28兆円)とドイツの約16分の1で、ギリシャと同程度(2014年)。また、失業率はユーロ圏全体とほぼ同水準の13.9%(2014年)です。ポルトガルは、ギリシャ・ショック等の影響から財政難に陥り、2011年にはEU(欧州連合)やIMF(国際通貨基金)からの支援を受けましたが、直後に就任したコエリョ氏の下で改革に取り組み、経済の回復と共に支援から脱しました。

コスタ社会党党首は緊縮財政の修正を図る方針のようです。社会党と連立政権を構成するとみられている左派系野党には、「反緊縮財政」や「ユーロ離脱」を掲げる政党があり、仮に反緊縮を掲げる政権が誕生すれば財政再建の取り組みが頓挫し、財政規律の維持を求める欧州委員会等との対立が深まる可能性もあります。また、反緊縮や反ユーロ(ユーロ離脱)の動きが勢いを増す場合には、カタルーニャ州の独立問題を抱えるスペインの総選挙(12月20日予定)や、EU等からの支援継続等を巡って一時混乱したギリシャの今後の政局運営等にも影響を与える可能性もあります。

市場への影響と今後の見通し

政局不安等から、ポルトガルの債券相場が下落しています。同国10年国債のドイツ10年国債に対する金利差(ポルトガル-ドイツ)は11月11日現在で約2.1%と、ギリシャ金融支援継続を巡って市場が混乱した今年7月頃の水準まで拡大しています。但し、ギリシャやスペインの債券市場への影響は現時点では出ていないようです。

次期首相が財政政策に関してどのような方針を取るのか、仮に反緊縮政策をとる場合、これまでの政策からどの程度修正を行うのか等を巡り、今後市場の関心が高まる可能性もあります。ポルトガルの経済規模は相対的に小さく、同国単独の問題に留まる場合の影響は限定的なものになると思われますが、スペイン等に飛び火する場合は、市場の混乱が一時的に大きくなる局面もありそうです。

グラフ1:経済規模(国内総生産)と失業率比較

出所:IMFデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:対ドイツ10年国債金利差推移

※1:対ドイツ10年国債金利差:各国-ドイツ
※2:ギリシャは市場閉鎖等から7月1日~8月2日はデータなし
出所:ブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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