金融市場NOW

デンマーク・カバード債券の足元の状況について

2022年06月14日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

欧州(ドイツ)長期金利は上昇基調を強める

  • 6月9日開催されたECB(欧州中央銀行)理事会で、量的緩和策である資産買い入れプログラム(APP)の終了と7月会合での利上げ開始の方針が示されました。ラガルド総裁は記者会見において、「中期的なインフレ見通しが低下しなければ、9月会合ではより大きな利上げ幅が適切である。」と発言し、9月には0.5%程度の大幅な追加利上げを行う可能性についても言及しました。これまで金融政策の正常化には慎重姿勢を示してきたラガルド総裁が、ブログで利上げ開始を示唆するなど、タカ派(金融引締め推進派)的な姿勢に方向転換したことから、欧州長期金利(ドイツ10年国債利回り)は急上昇しました(グラフ1)。

グラフ1:米10年国債利回りとドイツ10年国債利回り推移

  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • ユーロ圏の消費者物価指数<5月速報値:前年同月比>は+8.1%と前月(4月)から0.7ポイント大幅上昇し、伸び率は統計を遡ることができる1997年以降で最大を更新しました(グラフ2)。ロシア・ウクライナ情勢の長期化により、エネルギー価格は前年同月比で39.2%上昇しています。

グラフ2:ユーロ圏CPI(消費者物価指数)の推移

  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • 高騰が続く物価への対処として、主要国の金融当局が金融引締めを開始したことを受け、各国の長期金利は上昇しており、欧州長期金利も上昇基調を強めています。デンマーク・カバード債券の利回りも欧州長期金利に連れて上昇しました(債券価格は下落)(グラフ3、4)。

グラフ3:欧州(ドイツ)国債とデンマーク・カバード債券の推移

  • ・デンマーク・カバード債券:ニクレディトDMBトータルリターンインデックス(現地通貨ベース)
  • ・ドイツ国債:FTSE世界国債インデックスの各国国債インデックス(トータルリターン、現地通貨ベース)
  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

グラフ4:クーポン別デンマーク・カバード債券価格の動向

  • ・ニクレディト・レアルクレディト(2050年10月償還)クーポン別デンマーク・カバード債券価格の推移
  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

デンマーク・カバード債券の格付けはAAA

  • 債券市場の値動きが激しくなる中、デンマーク・カバード債券の対円為替ヘッジ後の利回りは3.0%近い水準であり、欧州各国の国債と比較して相対的に利回りが高い水準にあります(グラフ5)。
  • デンマーク・カバード債券の格付はAAAを維持しており、相対的に高い信用力を保持しています。
    • ニクレディトDMBインデックス構成銘柄の証券格付の平均

グラフ5:欧州国債とデンマーク・カバード債券の利回り(2022年5月末時点)

  • ・対円為替ヘッジ後利回り:最終利回り+為替ヘッジコスト・プレミアム
  • ・デンマーク・カバード債券:ニクレディトDMBインデックス
  • ・各国国債:ブルームバーグ各国国債インデックス
  • *上記で使用した為替ヘッジコスト・プレミアムは、1ヵ月物フォワードレート等を用いて計算した想定値(年率換算)であり、実際の為替ヘッジコスト・プレミアムとは異なります。
  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

今後の見通し

  • デンマーク・カバード債券の見通し
    • ロシア・ウクライナ情勢の長期化に伴う資源価格の高騰等を受けて、インフレ加速への懸念が世界的に高まっています。インフレの加速を背景に主要各国の中央銀行が利上げに動く中、金融政策の正常化には長らく慎重な姿勢を示していたECBも利上げに踏み切る方針を示したことから、今後は、欧州長期金利に上昇圧力がかかりやすくなるものと予想します。
    • 一般に、金利上昇局面では期限前償還が発生しにくくなるため、デンマーク・カバード債券はデュレーションが長くなるという特性があります。そのため、デンマーク・カバード債券は今後、一時的に価格変動が大きくなる可能性はありますが、相対的に高い格付けと利回りを背景に次第に落ち着きを取り戻し、需要は高まってくるものと思われます。
      • 金利の変動に対する債券の価格変動の大きさを表す。一般に、デュレーションが長い債券ほど金利の動きに対する債券価格の感応度は大きくなる。
    • 足元では2.5%債および3.0%債を中心に発行量はやや増加していますが、低クーポン債に買戻しも見られ、需給は安定しています。売られすぎた反動から、徐々に値動きは安定し良好な金利収入によってパフォーマンスは改善すると見込みます。
  • ヘッジプレミアムの見通し
    • デンマーク国立銀行の政策目標である対ユーロでのデンマーククローネ安定のため、2021年9月に行った利下げにより為替ヘッジプレミアム(2国通貨間の金利差相当分の収益)は改善しており、他の欧州圏国債と比較しても相対的に高いヘッジ後利回りを維持しています(グラフ5)。
    • デンマーク国立銀行による利下げ実施後も、対ユーロでデンマーククローネ高が継続しており、依然として政策目標レートから乖離がある状況が続いています。
    • 今後、デンマーク国立銀行もECBの利上げに追随する可能性があることや、為替水準の安定のために利上げを実施する可能性もあり、ヘッジプレミアムは徐々に縮小していくことが想定されます。
  • 期限前償還の見通し
    • 急速な金利上昇に伴って3.5%債の発行が中心となっています。大幅な金利低下がなければ期限前償還は当面抑制されると見込んでいます。
  • ECBによる金融政策の見通し
    • 6月時点でのインフレ見通しは、2022年、2023年、2024年いずれも3月会合から上方修正され、ECBの中期的目標である2.0%を上回る見通しが示されました。
    • 2022年7月1日をもってAPPの新規の買い入れを終了するものの、APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資については、政策金利の引き上げ開始以降も必要な限り継続する方針を示しています。利上げ開始後も、保有債券・国債の再投資を継続することを鑑みれば、他国と比較して金融政策正常化のペースは緩やかなものに留まるものと想定されます。

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