金融市場NOW
デンマーク・カバード債券の足元の状況について
2022年04月20日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
欧州(ドイツ)長期金利は上昇
- ウクライナ危機の長期化が懸念される中、4月14日開催されたECB(欧州中央銀行)理事会後の記者会見において、ラガルド総裁は「ウクライナ情勢の緊迫化により、インフレが加速するリスクが高まった。次回6月の会合において量的緩和策である資産購入プログラム(APP)の具体的終了時期を決める。利上げはAPP終了から1週間から数カ月後に開始する。」と発言し、年内利上げ開始の可能性に言及しました。年内利上げの可能性が示唆されたことから、欧州長期金利(ドイツ10年国債利回り)は上昇しました(グラフ1)。
- ユーロ圏の消費者物価指数<3月速報値:前年同月比>は+7.5%と前月(2月)から1.6ポイント大幅上昇し、上昇幅は統計を遡ることができる1997年以降で最大を更新しました(グラフ2)。ウクライナ情勢緊迫化が継続しておりエネルギー価格は対前年同月比で44.7%上昇しています。
- 高止まりが続く物価への対処として主要国金融当局が金融引締めを開始し、各国長期金利が上昇していることを受けて、欧州長期金利も上昇基調を強めており、デンマーク・カバード債券の利回りも欧州長期金利に連れて上昇しました(債券価格は下落)(グラフ3、4)。2020年3月の価格水準を下回り割安な水準にあると想定されます。
デンマーク・カバード債券の格付けはAAA
- 債券市場の値動きが激しくなる中、デンマーク・カバード債券の対円為替ヘッジ後の利回りは2%を超える水準であり、欧州各国の国債と比較して相対的に利回りが高い水準にあります(グラフ5)。
- デンマーク・カバード債券※の格付はAAAを維持しており、相対的に高い信用力を保持しています。
- ニクレディトDMBインデックス構成銘柄の証券格付の平均
今後の見通し
- デンマーク・カバード債券の見通し
- 欧州長期金利は、ウクライナ情勢に左右されやすい展開が続くことが予想されます。ウクライナ危機の長期化に伴う資源価格の高騰等を受けてインフレ懸念が世界的に高まっているものの、ECBは利上げについてはAPP終了後しばらくしてから緩やかなペースで実施するとしています。各国と比べ金融政策の正常化は緩やかに進むことが想定され、欧州長期金利の上昇は徐々に落ち着いてくると予想します。
- デンマーク・カバード債券は、相対的に価格変動が大きくなる可能性はありますが、相対的に高い格付けと利回りを背景に次第に落ち着きを取り戻し、需要は高まってくるものと思われます。足元では2.5%債および3.0%債を中心に発行量はやや増加していますが、低クーポン債に買戻しも見られ、需給は安定しています。売られすぎた反動から、徐々に値動きは安定し良好な金利収入によってパフォーマンスは改善すると見込みます。
- ヘッジプレミアムの見通し
- デンマーク国立銀行の政策目標である対ユーロでのデンマーククローネ安定のため、2021年9月に行った利下げにより為替ヘッジプレミアム(2国通貨間の金利差相当分の収益)は改善しており、他の欧州圏国債と比較しても相対的に高いヘッジ後利回りを維持しています(グラフ5)。利下げ実施後も、デンマーククローネ高が継続しており、依然として政策目標レートから乖離がある状況が続いています。ECBが年内利上げの可能性に言及するなど金融政策正常化に向けた動きをみせていることから、デンマークの追加利下げの可能性は低くなったとみられますが、低金利政策は当面は継続されることを予想します。
- 期限前償還の見通し
- 急速な金利上昇に伴って3%債の発行が中心となっています。大幅な金利低下がなければ期限前償還は当面抑制されると見込んでいます。
- ECBによる金融政策の見通し
- 3月時点でのインフレ見通しは、2022年については12月会合から大幅に上方修正されたものの、2024年には中期的目標である2%を下回る見通しが示されています。
- インフレ率の高止まりが続いた場合、2022年7~9月をもってAPPの新規の買い入れを終了する可能性はあるものの、償還された債券の再投資は長期間継続される見込みです。利上げに関してはAPP終了後も急がず、ペースも緩やかに実施する姿勢を示しており、他国と比較して金融政策正常化のペースは緩やかなものに留まると予想します。
金融市場動向
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