金融市場NOW
英国 新離脱法案公表も合意なき離脱再浮上か
2019年05月24日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
メイ首相は「大胆な新提案」を公表し6月初めに採決に臨む予定
- 与野党協議が決裂し、メイ首相は2度目の国民投票実施を含むEU離脱法案の4回目の採決に臨む。
- 新離脱法案が否決された場合には、その時点では10月31日の合意なき離脱が基本路線となると見られることから、合意なき離脱リスクの高まりに市場の警戒感が高まる可能性も。
メイ首相の新離脱法案可決も厳しいとの見方
EU(欧州連合)離脱法案の可決を目指すメイ首相は、10項目の「大胆な新提案」を盛り込んだ新離脱法案を公表し、6月初旬に採決に臨む予定です。混迷する離脱方針の解決策を探るための与野党協議は決裂しており、新提案には労働者権利や環境の保護などが加えられ、当法案が可決された場合、法案承認を目的とした国民投票実施の可否を決議することも含まれました(表1)。離脱法案に反対してきた各政党の賛成票獲得を意識したものであると思われます。
新離脱法案に対し、与党保守党の強硬離脱派は穏健的な離脱に偏っていると批判し、各党もこれまでの離脱法案と大差なく支持できない旨を表明しています。現地メディアは、保守党内からメイ首相の早期辞任を迫る動きもあり、新離脱案の可決は困難との見方を示しています。政権側は法案が否決され、合意なき離脱も拒否されるのであれば、残りの選択肢は解散総選挙かEU残留であるとしており、新離脱案採決を巡る混乱は予断を許さない状況となっています。
表1:新離脱法案に組み込まれた主な項目
具体的な内容 |
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有権者の支持は強硬離脱とEU残留が拮抗か
5月23日に投票が開始された欧州議会選挙は、英国民の民意を問う機会として注目されていますが、直近の世論調査では強硬離脱を唱えるブレグジット党が34%と最大の支持率を獲得しています (グラフ1)。 一方EU残留を支持する一部の労働党候補者や自由民主党などの支持率合計は現地シンクタンク調査によれば、ブレグジット党などとほぼ拮抗しており、26日に発表される選挙結果も離脱方針に影響を与えるものと思われます。一部メディアはメイ首相が5月24日中に辞任を表明し、6月10日から次期党首選開始の予定を報道しており、立候補を表明している強硬離脱派のジョンソン前外相が最有力と伝えています。前外相が党首となった際には、合意なき離脱も辞さないことを公約とした総選挙や離脱案の再交渉をEU側に迫るとの観測も出ています。欧州の景況感悪化が意識され出してからは、合意なき離脱の可能性の高まりに、市場が過敏に反応する傾向が見られます。新離脱法案否決の場合には、10月31日の合意なき離脱が基本路線となると見られることから市場では警戒感が高まっているようです。
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