金融市場NOW
シェールオイル増産で米国が最大の産油国に
2019年04月03日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
シェールオイルの比率上昇で原油価格の変動が大きくなる可能性も
- 米エネルギー情報局(EIA)によると、米国の2018年の原油生産量が45年ぶりに首位に。
- 原油生産量に占める米国の存在感が高まる。米シェールオイル企業は原油価格動向に応じて生産量を増減させる傾向がある。シェールオイルの比率増加で原油価格の値動きが大きくなる懸念も。
(1)米国原油生産が45年ぶりに世界一に
米国の2018年の原油生産量が45年ぶりに世界首位に返り咲いたことが、3月26日に公表されたEIAの報告書で明らかになりました。EIAによると、2018年の米国の原油生産量は前年比17%増の日量1,095万バレルと、前年は首位であったロシアの1,076万バレル、2位サウジアラビアの1,043万バレルを超えました。シェールオイルの増産が寄与したものと見られています(グラフ1)。米国では2000年代に入り、高圧の水力で岩を砕き地下深くの硬い頁岩(けつがん)(シェール)層に含まれる原油やガスを掘り出す技術が確立して「シェール革命」が起き、同国の原油生産量は10年前の約2.2倍に増加しました。
トランプ政権は雇用増等を目的に、規制緩和でシェールオイルの増産を促しています。EIAは米国の原油生産量は2027年までに最大で日量1,400万バレルに達すると予想しています。
(2)エネルギーに関する貿易赤字は縮小傾向
トランプ政権による貿易相手国に対する追加関税措置の発動等にも関わらず、旺盛な個人消費による輸入の増加等により、2018年の米国のモノの取引に関する赤字額は前年比約1割増の約8,800億ドル(約97兆円)と、過去最高を記録しました。一方、その内の原油等エネルギーに関する赤字額は2008年の約4,160億ドル(約46兆円)をピークに2018年はその10分の1程度に縮小し、モノの赤字額拡大を抑制する働きを示しています(グラフ2)。EIAの予想では、米国は2020年にはエネルギーの純輸出国になる見通しです。
(3)シェールオイル増産で原油価格の変動率拡大も
EIAによると、世界の原油生産に占めるOPEC(石油輸出国機構)のシェアは1970年代の5割強から2018年には4割強まで低下しています。OPECに代わり存在感を高めているのがシェールオイルを増産する米国です。
OPECは政府が生産量を調整するのに対し、米国のシェールオイル企業は原油価格の動向に応じてリグ(地下の石油・ガスを採りだすための井戸を掘る装置)の稼働数を調整し(グラフ3)、生産量のコントロールを行っているようです。原油生産に占めるシェールオイルの比率が高まることで、原油価格の変動がこれまで以上に大きくなることも考えられます。
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