金融市場NOW
欧州委員会がユーロ圏の経済見通しを下方修正
2018年11月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
イタリアの財政リスク懸念等ユーロ圏経済の先行きに不透明感が増す
- EU(欧州連合)の欧州委員会が最新の経済見通しで、2019年の経済成長率予想を下方修正。
- 2018年7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率(前期比・年率)の鈍化等、ユーロ圏経済は減速傾向を強めつつある。英国のEU離脱を巡る交渉の遅れ、イタリアの予算案を巡る財政リスク懸念等、ユーロ圏経済は先行きの不透明感を強めつつあるように思われる。
ユーロ圏経済成長率見通しを1.9%に下方修正
EU(欧州連合)の欧州委員会は、11月8日に公表した経済見通し(2018年秋号)の中で、2019年の実質GDP成長率(前年比)を、前回(2018年夏号)の+2.0%から+1.9%に下方修正しました。+2%を割り込めば3年ぶりとなります(表)。
表:欧州委員会の経済見通し(2018年秋号)
(%)
項目 | 実質成長率(前年比) | 物価上昇率(前年比) |
---|---|---|
2018年 | 2.1<2.1> | 1.8<1.7> |
2019年 | 1.9<2.0> | 1.8<1.7> |
2020年 | 1.7<-> | 1.6<-> |
足元の景気は減速傾向を強める
ユーロ圏の足元の景気は減速傾向を強めつつあります。ユーロ圏の2018年7~9月期の実質GDP成長率は前期比・年率換算で+0.6%と、2014年4~6月期以来約4年ぶりに+1.0%を割り込みました(グラフ1)。景気の先行指標ともされる製造業のPMI(購買担当者景気指数)は10月に2016年8月以来の低水準まで悪化しています。9月から欧州で導入された新たな自動車の排ガス検査で、同月のユーロ圏の新車販売台数が、駆け込み需要の反動等により前年同月比で2割以上減少したことが、2018年7~9月期の経済成長率の鈍化に影響したと見られています。新車販売低迷の他に要因になったと見られるのが、中国向け輸出の減速です。
中国はユーロ圏にとって、米国、英国に次ぐ3番目に大きな輸出相手国です(注)。ユーロ圏から中国(香港含む)への2018年1~8月期のモノの輸出は、前年同期比+2.7%と、2017年1~8月期の同+17.5%から急減速しています(グラフ2)。
- 2017年の比率は、米国:7.3%、英国:6.9%、中国:4.7%。
ユーロ圏経済の先行き不透明感が増す
米中貿易摩擦に加え、ユーロ圏自身も自動車の関税等を巡り米国との貿易摩擦を抱えています。また現在、英国のEU離脱を巡る同国とEU間の交渉が大詰めを迎えていますが、その進展や英議会の対応次第では、英国とEUが離脱条件で折り合えず、合意無しの状態で2019年3月の離脱時期を迎えることも考えられます。更にイタリアの2019年予算案を巡るEUとの対立が深まっており、市場ではイタリアの財政リスクが懸念されつつあります。ユーロ圏経済を取り巻く環境は不透明感を増しつつあると思われ、経済の減速傾向が今後も続く可能性があるものと考えます。
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