金融市場NOW
イラン制裁適用除外で原油価格下落
2018年11月08日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
サウジアラビアの生産動向次第で原油価格が再び騰勢を強めることも
- トランプ政権は11月5日、イランとの原油取引や金融取引の制限を含む制裁第二弾を発動。8ヵ国・地域の原油取引に関しては180日間の適用除外が認められた。当措置等を背景に原油価格は下落。
- イランの原油生産減少を補うべく、トランプ政権はサウジアラビアに増産を要請。サウジアラビアの著名記者殺害事件等を背景に同国が増産に応じない場合、原油価格が再び騰勢を強めることも。
原油価格が調整色を強める
10月初旬をピークに、原油価格が調整色を強めています。11月5日時点で、国際指標となるニューヨーク市場のWTI原油先物価格は約7ヵ月ぶり、アジア市場の指標となる中東産ドバイ原油のスポット価格(長期契約ではなく一回の取引ごとに成立する市場価格)は約2ヵ月半ぶりの安値まで下落しています(グラフ1)。
イラン制裁適用除外で供給ひっ迫懸念薄れる
原油価格の下落には、トランプ政権が決めたイラン産原油禁輸措置の適用除外も影響しているようです。同政権は5月、合意内容に弾道ミサイルの開発規制が盛り込まれていないこと等を理由に、イランと米国を含む6カ国が2015年7月に結んだ「核合意」からの離脱を表明し、経済制裁の再開を宣言しました。第一弾は8月7日に、イランとの原油取引や金融取引の制限を含む第二弾は11月5日に発動されました(表)。イラン産原油の輸入は、11月5日から全面禁止されるとの見方もありましたが、実際には8ヵ国・地域(注)について180日間の適用除外が認められました。2017年のイランから同8ヵ国・地域への原油輸出量は全体の約8割を占めており(グラフ2)、供給ひっ迫懸念が後退しました。
- 日本、イタリア、ギリシャ、中国、韓国、台湾、インド、トルコ
表:米国のイラン制裁の対象と発動時期
第1弾(8月7日発動) |
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第2弾(11月5日発動) |
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サウジアラビアの原油増産動向が鍵に
イランの原油生産量(日量)はトランプ大統領がイラン核合意からの離脱を表明する前の4月から10月までに約4割減少しています。米国務省のフック・イラン特別代表は180日後に更に適用除外することは考えていないと述べています。今回の措置で一旦は供給不足懸念が後退するものの、180日の期限が近づくにつれて、イランの原油生産は減少傾向を強める可能性があると考えます。その供給減を補う役割が期待されている国の一つがサウジアラビアです。トランプ大統領は同国に原油の増産を要請していますが、同国の著名記者の殺害事件をきっかけに、両国の関係が悪化する兆しも出始めています。サウジアラビアが増産に応じない場合、原油価格が再び騰勢を強めることも考えられます。
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