金融市場NOW
米10月賃金上昇率9年半ぶりの大きさに
2018年11月06日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
賃金上昇が物価上昇を加速させればFRBの利上げペースが速まることも
- 10月の平均時給は前年同月比3.1%増と、9年半ぶりの大きさとなった。これまで伸び悩んでいた賃金の上昇が勢いを増す兆しも。
- 賃金上昇でインフレ懸念が高まれば、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げペースを速める可能性も。「インフレなき経済成長」が継続するのか、物価や労働生産性動向が注目される。
10月雇用統計は雇用環境の引き締まりを示す
10月の米雇用統計は、雇用環境の引き締まりを示すものとなりました。景気動向を敏感に反映する非農業部門の雇用者数(前月比)は25.0万人増と、市場予想の約20万人を上回りました。同月の失業率は3.7%と前月と同水準でしたが、約48年ぶりという歴史的な低水準を維持しました。これまで伸び悩んでいた賃金が上昇傾向を強めています。10月の平均時給の伸び率(前年同月比)は3.1%増と、市場の予想通りではあったものの、2009年4月(同3.4%増)以来9年半ぶりの水準に達しました。同統計等を受けて、同日の米10年国債金利は約半月ぶりに3.2%台に上昇しました。
FRBの金融政策に影響を与える可能性も
賃金の上昇により物価上昇圧力が強まれば、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ姿勢が変化することも考えられます。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での参加者の金融政策見通しでは、年内あと1回、19年は3回、20年は1回、21年分はゼロとなっており、20年で利上げ路線を停止することが示唆されました。今後のFOMCで参加者による利上げ回数見通しが増える場合や、21年も利上げが継続される可能性等が示されれば、長期金利に上昇圧力が加わることで、株価や為替の動きが不安定になったり、経済の先行き不透明感が強まることも考えられます。
「インフレなき経済成長」が続くとの見方も
FRBの中には、物価上昇率(前年同月比)が2%近辺で落ち着いて推移していること、労働生産性の伸びが高まっていること等を理由に、「インフレなき経済成長」が続き、物価が安定しているなら想定以上の利上げは不要とする見方もあるようです。リーマン・ショック後しばらく1%近辺で低迷していた米労働生産性の伸びは、足元高まりつつあります。同生産性が向上すれば、商品の供給量が増えて供給不足による物価上昇が抑えられる可能性があります。FRBの金融政策を占う上で、今後も落ち着いた物価上昇が続くのか、労働生産性の伸びが継続するのか、その動向が注目されそうです。
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