金融市場NOW

新たな成長戦略素案まとまる

2017年06月06日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

政策資源投入 重点5分野に

  • 政府の2017年の成長戦略の素案は、「第4次産業革命」をめざすことが大きな柱となった。
  • ”ものづくり”や”豊富な医療データ”などの日本が強みを持つ分野に政策資源を集中する方針。
  • 今後は企業の投資意欲を後押しするため、政府による環境の整備などがよりいっそう求められる。

政府は5月30日に未来投資会議を開き2017年の成長戦略の素案を示しました。人工知能(AI)やビッグデータを起爆剤に「第4次産業革命」をめざすことが柱となっています。安倍首相は同会議において「少子高齢化に直面する日本は、失業問題を恐れずに人工知能やロボットを存分に活用できる」と述べたうえ、日本が強みを持つ分野で規制改革などを進める意向を示しました。

成長戦略は重点5分野として「健康寿命の延伸」、「移動革命の実現」、「サプライチェーンの次世代化」、「快適なインフラ・まちづくり」、「フィンテック(先端ITを用いた金融サービス)」をあげ(表)、日本が得意としている“ものづくり”や、国民皆保険制度に基づく“豊富な医療データ”などを生かし、特に日本が強みを持つ分野に政策資源を集中する方針です。成長戦略は与党と調整した上で、6月上旬に閣議決定される見込みです。首相は会議において、AIなどを念頭に「新たな技術をあらゆる産業や日常生活に取り入れ、ひとりひとりのニーズにあわせる形で社会課題を解決する『Society(ソサイエティ)5.0』を世界に先駆けて実現する」と強調しました。

成長戦略の実現においての横断的施策の1つで、今回目玉としたのが、欧州などをモデルに企業の要望を受けて省庁が関連法制を一時凍結し、全国で迅速な実証を可能とするサンドボックス制度※1の創設です。正規の規制緩和では法改正に時間がかかりすぎるため、企業と当局による相対の調整で実証実験を可能にすることで、斬新なアイデアや技術をいち早く取り込み新市場の創設につなげる狙いです。

AIなどの最新技術を日本経済の成長へつなげるには、多くの民間企業が採用し、各々リスクをとってビジネス化することが求められそうです。今後は、企業の投資意欲を後押しするための環境の整備などが必要となりそうです。

  • 企業が革新的な事業や金融商品・サービスを提供できるよう、現行法を即時適用することなく、安全な実験環境を提供する規制緩和策。小さな失敗を許容して試行錯誤をさせることから砂場(サンドボックス)遊びにたとえられている。

表:成長戦略素案のポイント

※2 金融機関やクレジットカード会社のシステムに接続するための仕様のこと。APIを通じた連携により、FinTech(フィンテック)事業者は金融機関やクレジットカード会社と安全に連携してサービスを提供できる。 出所:首相官邸「未来投資会議資料」、各種報道等を基にニッセイアセットマネジメントが作成
健康寿命の延伸
  • 現在バラバラになっている健康・医療・介護データの一元化(2020年度から本格稼働)
  • 効果的・効率的な遠隔診療の促進(18年度診療報酬改定)
  • AIを用いた医師医療診療の的確な支援(18年度以降の診療報酬改定)
  • 介護ロボット等の導入促進(18年度介護報酬改定)
移動革命の実現
  • トラックの後続無人での隊列走行(22年に商業化をめざす)
  • 無人自動走行の移動サービスの実現(20年の実現をめざす)
  • 都市部での小型無人機(ドローン)による荷物配送の実現(20年代に都市部で本格化)
サプライチェーンの次世代化
  • 「スマート保安」(IoTを活用した異常の事前予知)への対応
  • 国内外の複数企業のデータ連携の実証
快適なインフラ・まちづくり
  • 公共工事の3次元データのオープン化
  • インフラ点検・災害対応ロボットの開発促進
フィンテック
  • 銀行によるオープンAPI※2の推進
  • 新たな決済サービスの創出
  • 実証実験ハブ(仮称)を通じたチャレンジの容易化

参考レポート:金融市場NOW2017年6月2日号「『新産業構造ビジョン』まとまる」

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