金融市場NOW

中国経済“安定”の裏側

2016年11月01日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

不動産への高い依存 国際機関も警鐘を鳴らす

  • 中国の2016年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比6.7%増となった。
  • 不動産業の寄与度が大きく、一部の大都市では不動産バブルへの懸念が高まっている。
  • 国際機関も中国の民間債務の急増に警鐘を鳴らしており、今後の中国政府の対策が注目される。

中国の2016年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比6.7%増となりました。習近平指導部が目標とする成長率6.5~7.0%を維持しており(グラフ1)、中国経済は表面上は安定を保っているように見受けられますが、公共投資、不動産、借金に依存した経済はゆがみを深めつつあるようです。

特に不動産への依存が目立つようです。統計局によると1~9月期の成長率への不動産業の寄与度は8%となっています。マンションやオフィス販売は1~9月に41.3%増加し、北京や上海などでは取引が過熱している状況で、一部の大都市で不動産バブルへの懸念が強まっています。9月の主要都市の住宅価格指数(前年同月比)によれば、南京は40.6%、上海は同32.7%の上昇となりました(グラフ2)。住宅ローンの利用比率の引き下げや、2軒目以降の購入制限など、地方政府が相次ぎ不動産価格の抑制策に踏み切り、不動産市況の鎮静化に奔走しています。

国際機関も、不動産を中心とした中国の民間債務の急激な増加について警鐘を鳴らしています。国際決済銀行(BIS)は民間債務の対GDP比率がこれまでの傾向とどれだけかい離しているか、各国の指数を公表しています(グラフ3)。報告書によると、中国は30.1%(2016年3月末時点)と調査対象の43ヵ国・地域の中で最も高く、アジア通貨危機が起きた1997年のタイに迫る水準にあり、今後の金融危機のリスクも懸念される状況となっています。2015年12月に中国政府が打ち出した「供給側(サプライサイド)改革」では、過剰債務の削減が目標の1つに掲げられているものの、足元でも民間債務が減っていないのが現状です。中国の過剰債務が今後どのように調整されていくのか、中国政府の対策が注目されます。

グラフ1:近年の中国成長率は横ばい推移

近年の中国成長率は横ばい推移
※中国の実質GDP成長率(前年同期比)の推移
出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:主要都市の住宅価格は上昇が続く

主要都市の住宅価格は上昇が続く
※中国主要都市の住宅価格指数(前年同月比)の推移
出所:ブルームバーグのデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:民間債務の急拡張が経済危機につながってきた

民間債務の急拡張が経済危機につながってきた
※企業と家計の債務残高のGDPに対する比率が過去のトレンドとどのくらいかい離しているかの推移
*中国は1995年9月以前のデータはなし。
出所:国際決済銀行(BIS)のデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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