金融市場NOW

海外投資家の米国債券投資動向などについて

2015年10月23日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

(1) 海外投資家の米国債券投資動向

米財務省の国際証券投資統計(TICデータ)によると、2015年8月月間の海外投資家(民間・公的部門合計)による米国債券(政府機関債・社債含む)投資は約158億米ドル(約1.9兆円)の売り越しとなっています(グラフ1)。売り越しは7ヵ月ぶりですが以下の特徴があります。

  • (注)以外は2015年8月月間の数値
  • 公的部門が米国債券を約430億米ドル(約5.2兆円)売り越し。売り越し額は統計開始以降で最大。一方、民間部門は7ヵ月連続買い越しており、(注)今年1~8月累計買い越し額は約3,594億米ドル(約43.1兆円)と昨年年間の約2倍(グラフ1)。
  • 海外投資家は米国国債を約350億米ドル(約4.2兆円)売り越す一方、国債以外(政府機関債・社債)は約192億米ドル(約2.3兆円)の買い越し。買い越しは14ヵ月連続(グラフ2)。
  • 中国(民間・公的部門合計)が米国債券を約289億米ドル(約3.5兆円) 売り越しており、金額は前月の約2.6倍に増加(グラフ3)。8月1日に突如実施した対米ドルでの人民元切り下げに対応した動きであると思われる。

(2) 米国投資家の海外債券投資動向

上記TICデータによると、米国投資家による海外債券投資は13ヵ月連続して売り越しとなっています。2015年8月月間の売り越し額約416億米ドル(約5.0兆円)は統計開始以降で最大です。米国投資家の海外債券売りにより、特に新興国通貨は対米ドルで大きく下落しました(グラフ4、5)。

(3) 米国国債の落札動向

利上げによる金利の先行き不透明感がある中、米国国内では国債に対する個人や投資信託の買入れニーズが高まりつつあるようです。国債の入札における個人と投資信託合計の落札額(購入額)比率は上昇傾向が続いており、9月月間では5割近くに達しています(グラフ6)。
上記の通り、海外投資家の民間部門による米国債券投資は、8月時点まで買い越しが続いています。仮に利上げが実施されても、海外投資家や米国内投資信託の買い意欲等に支えられ、長期金利の上昇は限られたものになる可能性もあると思われます。

グラフ1:海外投資家の米国債券(政府機関債・社債含む)投資動向

出所:米財務省データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ2:海外投資家の米国政府機関債・社債投資動向

出所:米財務省データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ3:中国の米国債券(政府機関債・社債含む)投資動向

出所:米財務省データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ4:米国投資家の海外債券投資動向

出所:米財務省データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ5:主要新興国通貨対米ドル騰落率

出所:ブルームバーグデータを基にニッセイアセットマネジメントが作成

グラフ6:米国債入札における米個人・投資信託の落札額比率

出所:米財務省データを基にニッセイアセットマネジメントが作成

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