金融市場NOW
米国 戦略石油備蓄の追加放出へ
2022年04月06日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ガソリン価格の抑制に動く、史上最大規模の放出も効果は限定的か
- バイデン米大統領が戦略石油備蓄の追加放出を発表。半年間で最大で1億8,000万バレルとなる見込みであり、50年前に戦略備蓄制度が導入されてから最大規模となる。
- 11月の中間選挙に向け、バイデン米大統領によるインフレ対策がさらに強化される可能性も。
米国が戦略石油備蓄を再放出へ
3月31日にバイデン米大統領が戦略石油備蓄の追加放出を発表しました。戦略石油備蓄の利用は、2021年11月(5,000万バレル)、2022年3月(3,000万バレル)に続き3回目です。
今回の放出は5月より半年間にわたり1日あたり100万バレル、最大で1億8,000万バレルとなる見込みであり、およそ50年前に戦略備蓄制度が導入されてから最大規模となります。
米国が大規模な放出に踏み切る背景には、高騰するガソリン価格を是正する狙いがあるようです。ロシアによるウクライナ侵攻は継続しており、米国が経済制裁としてロシア産の輸入を禁止したことなどから原油価格は上昇基調を強めました(グラフ1)。
原油高を背景にガソリン価格の高騰が続いています。ガソリン価格の高騰は家計に直結しやすいため(グラフ2)、価格上昇を抑え、家計への負担を軽減することが狙いであるとみられます。
高騰が続けば新たな対策が講じられる可能性も
今回の放出量は、2022年1月時点における備蓄量(約5.9億バレル)のおよそ3割に相当します(グラフ3)。バイデン大統領は『米国以外の放出規模が3,000万~5,000万バレルとなる可能性がある』との見通しも示し、他国と協調して原油価格を落ち着かせたいようです。
備蓄放出は、米国内でシェールオイルが増産されるまでのつなぎとしたい意向のようですが、米国エネルギー情報局(EIA)によれば、ウクライナ侵攻前のロシアの原油輸出量は日量470万バレルであり、日量100万バレル程度の放出の効果は限定的との見方もあるようです。
ガソリン価格の高騰による国民の不満は大きく、バイデン米大統領は11月に中間選挙を控え、インフレを鎮静化させることで、国民からの支持を得たいものと思われます。
冬の暖房需要期が過ぎ、需要低下から今後は原油価格の上昇は一服するとの見方もありますが、価格高騰が続けば、放出規模の拡大など新たな対策が講じられる可能性もありそうです。
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