金融市場NOW
ドイツ エネルギー政策の転換へ
2022年03月15日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
ウクライナ情勢の緊迫化を背景にロシアへのエネルギー輸入依存度を引き下げへ
- ロシア軍によるウクライナへの侵攻が加速。経済制裁によりロシアからのエネルギー供給が大幅に制約されるとの懸念から、欧州の天然ガス価格が高騰。
- 欧州の中でもロシアへのエネルギー依存度が高いドイツのエネルギー政策の転換が進む可能性も。
経済制裁でエネルギーの供給不安が高まる
2月下旬より開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、首都キエフや第2の都市であるハリコフを攻撃するなど加速しています。
ロシアの軍事侵攻に対し、バイデン米大統領がロシア産の原油や天然ガス、石炭などの輸入を禁止するなど、米欧諸国は経済制裁を強化しています。ロシアは米国、サウジアラビアに次ぐ世界第3位*の産油国であり、世界有数のエネルギー輸出国です。経済制裁によりロシアからのエネルギー供給が大幅に制約されるとの懸念から、欧州の天然ガス価格が2月半ばより急上昇しました(グラフ1)。
天然ガス供給停止によるドイツへの影響は多大
欧州の天然ガスの調達は、隣接するロシアからのパイプライン経由が主流であり、輸入の4割近くがロシア産となっています(グラフ2)。なかでもドイツは、海底パイプライン“ノルドストリーム”でロシアから直送されていることもあり、天然ガスにおけるロシアへの輸入依存度は55%*と高水準となっています。ロシアからの天然ガスの供給が停止となれば、ドイツ経済への影響は大きく、ショルツ独首相は『公共サービスや市民生活に(ロシアからの供給は)不可欠である』とし、禁輸制裁発動後も当面はロシアからの輸入を継続する方針を示しています。
- bp Statistical Review of World Energy 2020より。
ドイツのエネルギー政策の転換が加速
ドイツ政府は5日、パイプライン以外の方法で輸入が可能となる国内初の液化天然ガス(LNG)の輸入ターミナルの建設を公表し、これまでロシアに依存してきた天然ガス調達先の多様化に向け動き出しました。ドイツは総電力量における再生可能エネルギーの割合を、2030年までに80%にするという目標を掲げています。しかし2021年時点では40%と、石炭・火力などへの依存度が高く(グラフ3)、洋上風力発電の拡大で、火力・石炭による発電割合を約2%まで縮小し、再生可能エネルギーへの移行が進む英国と比較しても遅れをとっています。対ロシア経済制裁発動を機に、エネルギー調達手段の再考や、再生可能エネルギーへのさらなる移行など、同国のエネルギー政策の転換が進むことが期待されます。
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