金融市場NOW
支持率低下のバイデン大統領 インフレ対策が急務か
2021年11月26日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
与党議員も多額の財政支出により更なるインフレ加速を懸念
- 気候変動対策を含む1.75兆ドル規模の歳出法案は、多額の財政支出により更なるインフレ率の上昇を危惧した一部与党議員などの反対により法案成立は不透明な状況。
- 支持率が低下するバイデン大統領にとってインフレ抑制と歳出法案成立は最重要事項か。
歳出法案の審議難航
15日、米国では紆余曲折を経て、1兆ドル規模のインフラ法案が成立しました。同時に審議されていた気候変動対策などを含む3兆ドル規模の歳出法案は、1.75兆ドル程度まで規模が縮小されています。コロナ対策を含めこれまで既に5兆ドル程度の財政出動していることから、同法案には財政規律の面で一部与党議員が規模縮小を訴えて、法案に反対する姿勢を示していました。
法案に反対する議員は、財政規律面に加えインフレ率が高止まりする中(グラフ1)、多額の財政支出による景気刺激がインフレ率の更なる上昇を招くことを危惧している模様です。19日に歳出法案は下院で可決されたものの、数名の与党上院議員は反対の姿勢を示しており、法案成立は不透明な状況となっています。
COP26で気候変動対策をアピールも
歳出法案には、約5,500億ドルの気候変動対策予算が盛り込まれています。先のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で、バイデン大統領は、歳出法案に気候変動対策予算が盛り込まれていることをアピールし、また新興国への気候変動対策向けの資金拠出として、2024会計年度まで毎年30億ドルの予算計上を議会に求めていくことを表明しています。気候変動対策、家計や教育支援をも含む歳出法案は、バイデン政権の目玉政策とも言われています。法案成立の遅れは、米国民のバイデン大統領への支持離れに繋がっている模様です。
就任直後に約55%あったバイデン大統領への支持率は、直近では約42%まで低下しています(グラフ2)。米大手メディアによる直近の世論調査では、支持率低下の理由としては、経済政策への不支持が目立っており、約半数の国民がインフレ率の高止まりをバイデン政権の失策だと感じていることが調査結果として示されました。
2022年中間選挙への影響も
インフレ率の高止まりへの早期対処や歳出法案の早期成立は国民に政策遂行能力をアピールする上で重要であると思われます。しかし、高インフレを招きかねない歳出法案成立とインフレ抑制を、相反する問題として法案に反対する与党議員もおり、この状況がよりバイデン政権の政策運営を困難にしていると想定されます。
2022年11月の中間選挙に向けた直近の調査では、野党・共和党への期待が、与党・民主党を上回りました。ただし、回答者の半数以上が歳出法案には支持の姿勢を示しており、バイデン大統領にとって、歳出法案の成立とインフレ率の抑制を同時に成し遂げることが、最重要事項であると思われます。
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