金融市場NOW
米労働市場 雇用ミスマッチ解消の道のり遠く
2021年09月13日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
企業は待遇改善に動き出すも、デルタ株のまん延が復職を阻む要因に
- ワクチンの接種が進む米国で、経済活動の正常化にともない、人手不足が深刻な問題となっている。
- 感染拡大で対面型サービスへの復職が躊躇されていることや、託児所等の閉鎖で復職が困難となっていることなどが要因か。
- 労働市場の需要と供給のミスマッチ解消には時間を要するか。
求人数は過去最多、雇用のミスマッチが続く
2020年12月より新型コロナウイルスワクチンの接種がスタートし、先進国の中でも接種が進む米国では、急速に進む経済活動の正常化にともない、人手不足が深刻な問題となっています。
米労働省が公表する雇用動態調査によれば、7月の非農業部門の求人数は1,093万人と、2000年12月の統計開始以来最多となりました。一方、採用数は667万件にとどまり、雇用のミスマッチ(求人数に対して求職者数が少ない)が見られます(グラフ1)。
感染拡大で復職が敬遠される動きも
2021年5月以降、全米各州で行動制限が順次解除され、飲食店等の営業時間の短縮や店内の人数制限が撤廃されました。業種別の求人率(雇用者と求人の合計に対する求人の割合)では、観光、旅行需要の急速な回復や来店客数が急増した宿泊・外食サービス業や芸術・娯楽・レクリエーションが高水準となり(グラフ2)、人材確保に苦戦を強いられているようです。米政府による手厚い失業保険給付や、感染再拡大で対面型サービスへの復職が躊躇されていること、オンライン授業の継続や託児所等の閉鎖で、子育て世代が復職できずにいることなどが主な要因とみられます。
企業は人材確保のため待遇改善に動き出す
復職を阻む要因の1つとなっていた失業保険の上乗せ給付が9月6日までに支給期限を迎え、秋以降、人手不足が解消に向かうとの見方もあるようです。コロナ禍を通じて柔軟な働き方や、より条件の良い職を検討する人が増加したことから、企業は人材確保のため、賃上げや福利厚生等の改善に動き出しています(グラフ3)。しかし、足元で広がるデルタ株による感染で、一部の地域では対面授業の再開が不透明となり、子育て世代を中心に復職が困難になることも予想されており、労働市場の需要と供給のミスマッチ解消には時間を要することとなりそうです。
金融市場動向
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