金融市場NOW
ワクチン接種進展で変わる米消費行動
2021年07月28日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
消費者の意識はモノ消費からコト消費へと変化
- 7月ベージュブックでは、米国経済の力強い回復が報告され、輸送を含む旅行業などで堅調な回復が示される。消費者の意識はモノ消費から娯楽などのコト消費へと変化。
- デルタ株まん延でも厳格な経済活動の制限措置は採られておらず、今後も力強い消費活動は継続か。
消費対象は旅行や娯楽などコト消費へ拡大
14日に公表された米国各地の経済状況を報告する7月ベージュブック(地区連銀経済報告)では、「米国経済は5月下旬から7月初旬にかけて力強さが増した」と報告され、回復ペースが加速していることが確認されました。輸送を含む旅行業や製造業、一部サービス業などの堅調な回復ぶりが示されています。ボストンでは、衣料品小売業の売上高がコロナ禍前の2019年と比較して約30%増となるなど堅調さが伝えられ、飛行機を利用した旅行なども直近数カ月で回復の兆しが見られるとしています。大都市ニューヨークでは、消費者意識が変化しており、消費行動はサービス業へ向かい、レジャーや娯楽産業が回復傾向にあり、ニューヨーク市内へ観光客が戻りつつあることが報告されました。サンフランシスコ連銀地区でも、観光業の回復によりハワイの小売業の改善が報告されています。
16日に公表された6月小売売上高は、前月比で0.6%増加しました。市場予想(前月比0.3%減)に反しての増加となり、消費の底堅さが確認されました。衣料やフードサービスがけん引しており、店舗への来客数の増加などが要因の一つと見られます。衣料やフードサービスなど前年大きく落ち込んでいた業種は前年同月比で40%を超える回復となっています。また、スポーツ・娯楽関連など前年同月比では10%増と他の項目と比較すると増加幅は少ないものの(表1)、7月ベージュブックを踏まえると今後、旅行や娯楽、スポーツ関連の消費が堅調に推移すると想定されます。メジャーリーグベースボールなどでは多くの球場で観客動員数の制限が撤廃されるなど、「コロナ前」と変わらないスタイルで娯楽を楽しむ姿が伝えられています。コロナ禍で貯蓄を増やした人々の消費対象はモノ消費から、旅行やアウトドア、スポーツなど屋外で余暇を過ごすといったコト消費へと拡大しつつあると見られます。
表1:6月小売売上高(季節調整済み)
主な項目 | 前年同月比 | |
---|---|---|
小売売上高 | 18.0% | |
家電 | 37.3% | |
食品・飲料 | 3.0% | |
ヘルスケア | 13.8% | |
衣料 | 47.1% | |
スポーツ・娯楽等 | 10.2% | |
フードサービス | 40.2% |
デルタ株による感染拡大への懸念は?
米国では感染力の強いウイルス(デルタ株)のまん延により、1日あたり新規感染者数が急増し、景気の先行き懸念から7月中旬の米国株は下落しました。しかし、現時点では感染者数急増に対し、ロックダウンなど厳格な対応策を採る州は少ないようです。米疾病対策センターは、「デルタ株感染率が高くなっているのは、ワクチン接種率の低い一部地域である」としており、ワクチンにより新規感染者数に対し死者数が過去に比べ低く抑えられていることが、厳格な対応策が少ない要因と見られ、欧州各国においても同様の傾向となっています(グラフ1)。まだ不明な点があるものの、ワクチンはデルタ株感染の重症化抑制にも効果があるとされており、ワクチン接種がさらに進むことにより、今後も力強い消費活動が継続していくことが想定されます。
金融市場動向
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