金融市場NOW
米政権 気候変動問題を含むインフラ計画を発表
2021年04月06日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
8年間で2兆ドル規模の投資計画で老朽化した道路などを整備
- バイデン大統領は8年間で2兆ドル規模の投資を行う長期的な経済プログラムを発表。4月中旬には介護や労働者の賃金上昇を目的とした計画も公表予定であり、経済プログラムは合計4兆ドル規模になるとの見方も。
- 計画には世界的に関心の高まっている気候変動対策も盛り込まれており、法案の行方が注目される。
道路・橋等のインフラ再構築を進める
3月31日バイデン大統領は長期的な経済プログラムとして、インフラ再構築計画を公表しました。8年間で2兆ドル規模の投資を行い、老朽化した道路や橋、ダムなどの再構築を目的とした計画です。4月中旬には介護や労働者賃金上昇などを目的とした計画の公表が予定されており、プログラムは合計4兆ドル規模になるとの見方もあります。
今回公表された計画では、道路・橋・空港・鉄道などインフラ整備に約6,000億ドル、半導体など米国製造業の強化に3,000億ドルを投じることを議会に提案しています(表1)。米国では予算審議は議会、予算執行は大統領の職務であるため、今回の投資計画は議会の承認が必要となります。
表1:インフラ計画の主な項目
主な項目 | 金額(億ドル) |
---|---|
道路・橋・電気自動車充電設備の設置等 | 6,210 |
半導体など米国製造業強化 | 3,000 |
AIやバイオなど研究開発支援 | 1,800 |
再生可能エネルギー電力供給網整備 | 1,000 |
高速通信網の整備 | 1,000 |
気候変動対策にも取り組む
投資計画の一部(インフラ整備や電力供給網整備など)には、気候変動対策が含まれています。気候変動の主要因である温室効果ガス削減のため、約1,700億ドルの電気自動車への乗り換え推進などが計画され、その中には50万か所の電気自動車充電スタンド設置への補助金が含まれます。また、石油などの化石燃料由来の電力に変わって太陽光や風力など再生可能エネルギーを利用した電力を供給する送電網の建設を推進する資金なども含まれています。バイデン大統領の選挙公約(表2)では、これらの気候変動対策への投資により、新たに数百万人程度のより高い時給の雇用を創出するとしています。
表2:バイデン大統領の環境政策の公約
- パリ協定(温室効果ガス排出削減等のための国際枠組み)復帰
- 2兆ドルの気候変動対策、再生可能エネルギー投資(投資により雇用創出)
- 2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ
- 気候変動サミット開催(4月22日開催予定)を通じた排出削減の推進
共和党は一部賛成も反対の立場
2兆ドル規模の投資の財源は、法人税率の引き上げ(21%から28%へ)や企業の海外収益への課税強化、化石燃料事業への補助金廃止などで賄うとしています。共和党は老朽化した道路や橋などのインフラ整備には賛成としながらも、追加経済対策が成立したばかりであり、さらなる財政出動へ反対の立場を示しています。また企業への増税による米国企業の競争力低下や、再生可能エネルギーへの転換によるエネルギー価格上昇から、かえって雇用が減少することを懸念しています。
気候変動問題へ高まる世界的な関心
投資財源は個人への増税は含まれず、企業への増税のみとされました。前トランプ共和党政権での減税策は、個人より企業への恩恵が大きいとの批判があり、企業への増税に反対することは、“共和党は企業ばかりを擁護している”との印象を有権者に与えかねないことから、安易に法案に反対しにくいとの民主党の狙いもあるようです。
欧米では中央銀行が気候変動問題へ関心を高めており、気候変動が経済や企業活動に与えるリスクも注目されています。世界的に気候変動への意識が高まる中、巨額の財政出動を伴う法案の行方が注目されます。共和党の反対もあり、法案成立まで紆余曲折が想定されるものの、長期に亘る投資が見込まれることから、恩恵を受けるインフラ、環境関連の個別銘柄物色が進むことが想定されます。
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