金融市場NOW

ウィズコロナ環境におけるデンマーク・カバード債券投資

2021年02月17日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

低金利環境下で相対的に魅力が高まるデンマーク・カバード債券

新型コロナウイルス感染拡大により各国中央銀行は大規模な金融緩和を続けており、市中金利は大きく低下しています(グラフ1) 。デンマーク・カバード債券は相対的に高い信用力と利回りを有しており、高い利回りを求める世界の投資家から今後さらに注目が集まるものとみられます。

世界的な感染拡大による金融市場の混乱により、デンマーク・カバード債券も2020年3月中旬に大きく売られたものの、各国金融市場の落ち着きと歩調を合わせ、デンマーク・カバード債券市場も落ち着きを取り戻しています(グラフ2)。

ワクチン普及による感染抑制が期待されるものの、各国で経済活動を制限する動きは継続しており、世界経済の先行き不透明感は当面続くとみられます。デンマークでは、今年に入り新規感染者数は減少傾向にあるものの変異種による感染者は増加しており、経済活動の制限は継続するものとみられます。

  • 複数の住宅ローン等を担保として発行される債券。多数の住宅ローン等をまとめて裏付け資産とし、ローンの借り手から返済される元利金を、そのまま投資家に通過させて支払う仕組みの債券。発行体により信用補完がされているなどから相対的に信用力も高い

グラフ1:主要国の国債とデンマーク・カバード債券の最終利回り

  • 出所:ブルームバーグ等のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • 各国国債:ブルームバーグ・バークレイズ各国国債インデックス
  • デンマーク・カバード債券:ニクレディトDMBインデックス

グラフ2:デンマーク・カバード債券指数と世界債券指数の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成
  • デンマーク・カバード債券指数:ニクレディトDMBトータルリターンインデックス(現地通貨ベース)
  • 世界国債:FTSE世界国債インデックス(除く日本、現地通貨ベース)

デンマーク・カバード債券の足元の状況

クーポン別にデンマーク・カバード債券の動向をみると、2.0%債、1.5%債に比べて回復が遅れていたクーポンの低い1.0%債も、急落前とほぼ同水準となっています(グラフ3)。一方で、ワクチン普及による経済活動正常化への期待などから金利が上昇することとなれば、相対的にデュレーションが長い1.0%債では、一時的に変動性が高まることも想定されます。

しかし、デンマーク国立銀行(中央銀行)は、向こう5~10年間はマイナス金利にとどまることを示唆する発言を行っており、当面の間マイナス金利政策が継続する可能性が高いほか、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)も今後数年は金融緩和を維持する姿勢を見せていることから、世界的な低金利環境は継続するものとみられます。

  • 金利の変動に対する債券の価格変動の大きさを表す。一般に、デュレーションが長い債券ほど金利の動きに対する債券価格の感応度は大きくなる。

グラフ3:クーポン別債券価格の動向

  • ※ニクレディト・レアルクレディト(2050年10月償還)クーポン別債券価格の推移
  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

2019年10月の期限前償還(借換え申請の締切:2019年7月末)および2020年1月の期限前償還(同:2019年10月末)は、金利の急低下を背景に期限前償還額が直近20年で最も大きくなりました。しかし、金利の急低下による住宅ローンの借換えが2019年で一巡したことから、2020年4月および7月の期限前償還額は限定的となりました(グラフ4)。

また、2020年10月の期限前償還(借換え申請の締切:2020年7月末)は、期限前償還額が560億デンマーク・クローネ、2021年1月の期限前償還(借換え申請の締切:2020年10月末)は、630億デンマーク・クローネとなりました(グラフ4)。1.5%債は当初予想よりも大きくなったものの、全体としては概ね予想どおりとなりました。一昨年の借り換え一巡により、借り換えニーズは少なくなることが見込まれ、今後の期限前償還は限定的なものに留まることが予想されます。

グラフ4:デンマーク・カバード債券の期限前償還額の推移

  • 出所:ダンスケ銀行のデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

コロナ感染再拡大とデンマーク・カバード債券を取り巻く環境

デンマークは、強固な財政基盤を活用して早期から対策を講じてきた結果、新型コロナウイルス感染拡大の影響を比較的軽微に抑え込んできました。

引き続きコロナ感染再拡大の動向を注視

グラフ5:100万人当たりの感染者数の推移

  • 出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

デンマークの感染者数は、早期に打ち出したロックダウン(都市封鎖)などの政策が機能した結果、欧州域内でも比較的感染が抑えられているとされるドイツをやや上回る水準で推移してきました(グラフ5)。デンマークでは2020年末よりワクチン接種が開始され、欧州連合(EU)加盟国の中での人口当たりの接種率が高い国の1つとなっており、感染抑制の期待が高まっています。デンマークでは2021年に入り、新規感染者数や入院者数が減少しているものの、感染力が強いとされる変異種による感染も確認されており、今後の動向には注視が必要です。

雇用の悪化を抑制、ローン延滞率も低位安定

グラフ6:デンマークの失業率と住宅ローン延滞率

  • 出所:ブルームバーグおよびファイナンスデンマークのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

デンマークは社会保障が充実しており、解雇された場合、最長2年間にわたり失業保険から従前の給与の90%を上限に給付金が支払われます。
2020年3月には、感染拡大による影響を被った企業の雇用維持策として、政府が従業員の給与の75%を支給するといった政策が実施されました。このような政策対応により、米国や他の欧州諸国と比較して失業率の悪化が抑えられているとみられます。また、安定した雇用環境を背景に、住宅ローンの延滞率は相対的に低位で安定的に推移しています(グラフ6)。

過熱感がみられない住宅市場

グラフ7:住宅価格の推移

  • 出所:OECDのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成

デンマークの住宅価格は、ドイツよりは高いものの、近隣のスウェーデンよりは上昇しておらず、特段の過熱感はみられていません(グラフ7)。
デンマーク・カバード債券の裏付け資産となる個別のローンは、LTV比率(担保価値に対するローンの割合)を80%以下に抑えることが義務づけられています。足もとのLTV比率は6割前後と低く、景気悪化や不動産価格下落時に、担保価値が毀損しにくくなっています。

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