金融市場NOW
英国・EU 通商協定で合意
2020年12月28日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
通商協定の年内承認により年明け以降の経済活動の混乱避ける
- 英国・EU(欧州連合)の通商協定で合意。年明けからの双方貿易品への関税賦課を回避。
- 合意により英国のEU離脱による経済活動の混乱は回避され、市場の関心事となっていた2020年の政治イベントを無事通過し、不透明感が払拭された。
2020年内承認で関税賦課を回避
24日、大詰めの交渉が続いていた英国・EUの通商協議が合意に達しました。英国は合意内容の議会承認を、30日に得る見込みを表明しました。EUでは欧州議会での承認が必要となりますが、審議時間が無いことから、2月末までの暫定的承認とし、年明け以降に正式承認を得る予定です。これにより通商協定は英国とEUで年内に承認され、2021年1月1日より協定が発効されることになります。懸念されていた物流や旅客輸送など経済活動における混乱は回避される見込みです。
締結されるFTA(自由貿易協定)では、優遇税率で輸出入できる物品と数量を設定せず、全物品・全数量が関税ゼロで輸出入可能となります。ただし、英国・EU域外からの原材料を一定の割合以上使用した物品には、関税が賦課される可能性があります。
一連の協議ではFTAに加え、2021年1月1日以降の取り決め「将来の関係性」でも合意しました。今後、ヒト・モノ・サービスの自由な移動は出来なくなります。また英国への移民希望者は、年収や英語力などで算定されるポイント制度によって、受け入れの可否が決定されることになります。どちらかが大幅な規制緩和を行った場合には、制裁措置を採れる制度が導入されることになりました(表1)。
表1:主な合意内容
内容 |
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関税ゼロとする自由貿易協定を締結 |
2021年1月1日以降、英国・EU間のヒト・モノ・サービスの自由な移動を終了 |
航空、鉄道、陸路、海上交通は現状維持 |
公正な競争環境確保のため、英国はEUルールを尊重する |
公正な競争が歪められた場合には、必要な措置(制裁関税等)が採られる |
EUの英国水域での漁獲量は現状維持(移行期間5年半、25%削減) |
最大の争点の漁業権で英国が譲歩
最大の争点と見られていた「英国海域でのEU諸国の漁業権」では、EUが漁獲量25%削減と移行期間6年間、英国領海沿岸(排他的経済水域)での操業許可を求めたのに対し、英国は漁獲量60%の削減と3年の移行期間、英国領海沿岸での操業停止を主張していました。最終的には、移行期間は5年半、漁獲量25%削減、英国領海沿岸での操業許可(現状維持)で合意しました。「主権の回復」をスローガンに、約50年ぶりとなる自国排他的経済水域での英国漁船のみの操業を主張していた英国が譲歩する形となりました。
英ポンドは合意を好感
24日の英ポンドは、英国の漁業権での妥協案をEUが拒否したとの報道を受けて一時対米ドルで下落しました。その後、更なる協議で合意に達したとの報道を受け一転上昇するなど、交渉の行方を巡り値動きの激しい展開となりました(グラフ1)。
通商協定の合意により、2020年の市場の関心事であった2つの政治イベント(米国大統領選と英国・EU通商協議)を無事通過し、市場は一定の安心感を与えられたと思われます。ワクチン普及による感染抑制により、2021年に見込まれる景気回復は市場に織り込まれていることが想定されます。市場の期待を良い意味で裏切る景気回復がどの程度進むのかが、来年の相場動向のポイントになると思われます。
金融市場動向
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