金融市場NOW
2020年米大統領選(9)
米大統領選 バイデン氏優勢のまま最終盤へ
2020年10月13日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
トランプ大統領感染からの早期復帰も状況は変わらず
- 大詰めを迎えた米大統領選は、追加経済対策の協議難航、トランプ大統領の新型コロナウイルス感染などの事案が発生する中でもバイデン氏優勢は変わらず。
- バイデン大統領誕生は米国株の下落要因とならないが、選挙結果への異議申し立てなど混乱発生は下落要因に。
大統領の発言を巡り乱高下
11月3日の投票日が3週間後に迫り、選挙戦最終盤を迎えている大統領選は、バイデン前副大統領が支持率で優勢となっています。大統領選を直前に控えて米国株式市場は政局を左右すると思われる材料に一喜一憂する展開となっています。
早期成立が期待されるものの、協議が難航している追加経済対策に対し、トランプ大統領は可決は選挙後でよいとの姿勢を示しましたが、数時間後には大規模な人員削減が予定される航空会社などの支援策については早急にまとめるよう議会に求め、追加経済対策に対する大統領の真意を測りかねて市場は乱高下しました。
トランプ大統領の新型コロナウイルス感染に端を発し、20名超の側近やホワイトハウス職員の感染が判明したことで、政権の安全対策に疑問の声が上がっています。トランプ大統領は数日で退院し、国民に「強い大統領」の姿勢を示しましたが、バイデン氏との全米支持率は10ポイント差まで広がり劣勢となっています。感染の拡大に敏感な高齢者層や「サバーバン・マム」と呼ばれる郊外在住で比較的裕福な教育や政治に関心の高い母親層がバイデン氏支持に回っていると見られます。
トランプ大統領に挽回の目はあるのか?
9月29日の第1回討論会では、トランプ大統領がバイデン氏の発言を度々遮る姿勢に批判の声が上がるなど、支持率挽回にはつながりませんでした。“コロナ対策”については約7割のバイデン氏支持者が支持の理由として挙げており、トランプ大統領にとっては再選を阻む最大の課題であると見られています。8日に行われた副大統領候補者の討論会でもコロナ対策を巡り激しい論戦となりました。「コロナ前」の米国経済は比較的堅調に推移し、賛否両論はあるものの外交政策で国益を最優先とした「強い大統領」は一定の国民に支持され、当初は再選の可能性も高いと見られていました。残り1回の討論会(第2回討論会は中止)で「コロナ対策の失敗」のイメージを払拭し、支持率を挽回できるかが注目されます(表1)。
表1:今後の日程
日程 | イベント |
---|---|
2020年10月15日 | 第2回討論会(フロリダ州:マイアミ)⇒中止(オンライン開催を巡る両陣営対立のため:11日現在) |
2020年10月22日 | 第3回討論会(テネシー州:ナッシュビル) |
2020年11月3日 | 大統領選挙・議会選挙(上院の1/3・下院全議員) |
2020年12月14日 | 選挙人投票日(この日までに事実上の勝者未確定の場合は1州1票の下院投票などの可能性も) |
2021年1月3日 | 新議会発足 |
2021年1月20日 | 新大統領就任式 |
民主党が大統領選・上下院選すべてで勝利も
フロリダやペンシルベニアなど激戦州でも支持率でバイデン氏優勢(表2)となる中、投資家は「バイデン大統領」を想定し始めているようです。バイデン氏は大企業などへの増税策により、10年で4兆ドル程度の税収増を見込んでいます。増税は米国株にとってマイナス要因となりえますが、上下院選挙でも民主党優勢が伝えられており、大統領選勝利と上下院多数派獲得となれば、追加経済対策やインフラ投資など5兆ドル規模とも試算される景気対策が期待されます。バイデン氏勝利でも、米国株の大きな下落要因にはならないと想定されます。しかし開票結果を巡り異議が申し立てられるなど新政権発足に不透明感が高まる場合には、下落要因になるものと思われます。
表2:激戦州での支持率
州名 | 調査期間 | トランプ | バイデン |
---|---|---|---|
フロリダ州 | 9/21 ~10/7 | 44.3% | 48.0% |
ペンシルベニア州 | 9/24 ~ 10/5 | 43.9% | 51.0% |
オハイオ州 | 9/17 ~10/6 | 46.2% | 46.8% |
ミシガン州 | 9/14 ~10/7 | 42.7% | 49.4% |
ノースカロライナ州 | 9/16 ~10/6 | 46.9% | 48.3% |
ミネソタ州 | 9/8 ~9/24 | 41.0% | 50.4% |
テキサス州 | 9/15~10/6 | 49.0% | 44.8% |
アリゾナ州 | 9/15 ~10/7 | 45.7% | 48.8% |
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